技術を正しく、分かりやすく紹介することの重要性

技術を正しく、分かりやすく紹介することの重要性

「どんなに素晴らしい製品ができあがったとしても、それを使う側は初めて触れるものであり、どんな影響や効果があるかは分かりません。興味と同時に不安を感じているのです。メーカーや開発技術者は、研究開発を通じて製品を隅々まで知っているから不安を感じないだけなのです。これまで私はずっと開発部門にいましたが、いま自分が技術を伝える、普及させる側に立って初めて開発者とユーザーに大きな溝があることに気づきました」。

▼これはある研究開発機関の部門長と話をした時のコメント。一技術者であった時は、なりふり構わず開発に没頭すればよく、良いものを出せば世間は理解して使ってくれると思っていたが、いざ役職が上がり、部門長として普及に向けた情報発信業務に携わるようになると、そうではないということに気づかされたのだという。ユーザーは技術的メリットよりも変えた時の影響やリスクを第一に考える。しかも彼らが思う影響範囲は、ユーザーの先にいる顧客やその周りの社会にも広がっている。本当に使ってもらおうとしたら、そこまでのリスクを考え、不安を取り除けるようにしておかなければならないと思ったそうだ。

▼彼は理解度を深めてもらうため、技術説明の表現を誰でも分かるような言葉に変えた。また専門家に協力を仰ぎ、法律や金融面への効果も取り入れることで技術の意義を強化した。ここまでやると、ユーザーの雰囲気も変わり、前向きに捉えてもらえることが増えたのだという。「丁寧に説明する。これに尽きます。納得いくまで説明し、不安を取り除いていく。それだけです」。作れば売れる時代が終わり、ユーザーの目は厳しく、財布の紐も固い。それを払拭するためには、情報公開や発信の仕方を根本から改めないといけない。


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。