技術のルーツ

技術のルーツ

産業革命まっただなかの18世紀末から19世紀にかけては、今の製造業の基礎ができた時期としてとても面白い。

例えば、この時期に世界で初めて「工場」というものが作られた。1771年にイギリスのクロムフォードという都市で、リチャード・アークライトによって設立された紡績工場がそれだ。水車を動力とし、そこで得た力・エネルギーを使って紡績機械を動かし、糸の大量生産を実現した。製造業の根幹をなす「工場」はここから始まった。

 

近代的な工作機械が生まれたのもこの時期のイギリスだ。「工作機械の父」とも言われるヘンリー・モーズリーは、それまで職人の技術差によってバラツキが出ていた旋盤を改良し、バイトを固定できる工具送り台付き旋盤を開発して精密な金属加工ができるようにした。

さらに1800年には、ねじ切り旋盤を開発。当時は品質がばらついていたため特定の組み合わせでしか締めることができなかった。それを精密加工によって標準化と互換性を実現し、径が合っていればどんなボルトとナットでも締められるようになったのがこの時期だ。

 

いまでは当たり前になっていることでも、少し過去にさかのぼるとできていなかった、その概念すらなかった事がたくさんある。特にそれが顕著であり、多領域にわたって存在していたのが第一次産業革命の時期だ。

コロナ禍によってリモートワークになったり、案件が減って、普段よりは時間ができたという声をよく聞く。自分磨きで勉強したり、本を読んだり、体を鍛えたりするのもいいが、こういう時だからこそ、普段から自分が接している技術や製品のルーツに目を向けてみてはどうだろう。今までにない発見や愛着が湧くのは間違いない。それが次へのエネルギーになる。


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。