情報化時代の工場とは?eスポーツの議論から考える

情報化時代の工場とは?eスポーツの議論から考える

平昌オリンピックの開幕2日前、初めて五輪公認のeスポーツ(エレクトリックスポーツ)の国際大会が行われた。eスポーツとは、コンピュータゲームをスポーツ・競技として捉えたもので、競技人口は1億人を超えると言われている。この大会をきっかけに、eスポーツが五輪競技に加わるかもといった論調が盛り上がり、テレビでも特集されていたが、世間の意見は賛否両論に分かれた。ただそのなかで一つ、なるほどと思わされた意見があった。

▼番組では、ゲームはスポーツではない、体を動かして汗を流してこそのスポーツだといった視聴者の意見に対し、ある識者がスポーツの歴史を紐解きながらeスポーツの立場を解説した。識者いわく、スポーツは100メートル競争やマラソンといった陸上競技やレスリング、水泳などの個人競技にはじまり、時代を経てサッカーや野球、バスケット、バレーといった団体競技が出てきた。ついで工業化の時代になり、自動車やバイクなどを使って競技をするモータースポーツが生まれた。情報化社会になり、コンピュータ技術や情報の扱い方に注目が集まるなか、eスポーツもこの時代にあったスポーツの形である。時代に合わせてスポーツの形も変わる。それを柔軟に取り入れることが大事だと説明した。至極当然の話だが、改めて感心してしまった。

▼時代によって人の価値観は変わり、文化も変わる。そこに対応し、新しいものを取り入れ、時代を作っていくことはスポーツに止まらず、どんな分野でも重要なことだ。いま製造業も大きな変革期を迎えている。IoTやAI、ロボットなど新しい技術が出てきて、工場や製品、働く人の価値観も変わり始めている。会社の経営理念、顧客や市場を重視する姿勢、QCDへのこだわりなど、根っことなる部分は変えてはいけないが、いまの時代、これからの時代に必要な工場とは、ものづくりのあり方とはというものは問い続けていかなければいけない。


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。