工場内技術を屋外で活用する

工場内技術を屋外で活用する

先日、NHKのニュースで、認知症の高齢者が徘徊して迷子になった際、早期発見のための工夫を紹介するコーナーがあった。

てっきりGPS付きのウェアラブル端末やRFID等を使ったものかと思っていたら全然別のやり方だった。いい意味で裏切られ、確かにこういうやり方なら手軽で簡単、コストも少なくて済み便利だと思った。

 

その方法とは、高齢者の爪にQRコード柄のネイルをするというもの。埼玉県入間市が提供しているもので、QRコードには市役所の電話番号と利用者に割り当てられる番号の情報が入っている。発見した人がそれをスマートフォンで撮影すると市役所の連絡先が表示され、市役所に電話をしてもらうという仕組みだ。

介護現場でのQRコード活用は以前から行われていたが、そのほとんどがQRコードが印刷されたタグのついた衣服やQRコードが描かれたシールだった。認知症の高齢者はその服が気に入らなくても着なければならないし、シールは剥がれないようにしなければならない。介護をする家族や施設の職員もそれを強いるという意味では負担は大きく、お互いにとってベストではない。

一方ネイルの場合、常に身についていて、耐久性はシールの比ではない。またウェアラブル端末などに比べれば圧倒的に低コストで運用も簡単だ。

 

最近は中国をはじめ、日本でも決済サービスの普及がスタートし、再びQRコードの利便性に注目が集まっている。

QRコードは、工場内ではずいぶん昔から部品や在庫品の管理に使われてきた。いわば熟成した技術だ。しかし、工場から一歩屋外に出ると先進的で、これまで考えられなかったような使い方が発見されることは珍しくない。

さらに全然別の分野の技術と組み合わさることで、想定外の技術が生み出されることもある。認知症介護におけるネイルとQRコードの活用はその好例だ。新規市場はドアの向こう側に広がっている。


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。