大学の「知」をつなげて産業を生み出す – 科学技術振興機構(JST)の...

大学の「知」をつなげて産業を生み出す – 科学技術振興機構(JST)の事例

大学の知(シーズ)を活用する支援

最先端科学技術のシーズは、大学や研究所に多くあります。

そのシーズを民間企業に展開することにより、新しい産業の創出と育成を応援しているのが科学技術振興機構(以下「JST」)です。

Laboratory glassware with formula on blackdesk in the school chemistry lab. 3d illustration

JSTでは、大学発のシーズを活用した研究成果の効果的な事業化を図るため、大学の研究開発を開発費の補助という形で支援しているとのこと。

大学のシーズを使う場合、(1)大学等の研究成果であるシーズの可能性を検証して顕在化させ実用化に向けた研究開発をする初期段階、(2)顕在化したシーズの実用性を検証する中期段階、(3)製品化に向けて実証試験を行うために企業主体で企業化開発を実施する後期段階があります。

それぞれの研究開発段階に応じた研究開発費を補助することで開発が進みやすくしています。

特に、市場に乗せられるような製品に展開できるまでに最先端のシーズを育てるには相当のコストがかかるため、大学や企業がシーズの活用に挑戦するには、このような制度が重要となっています。

マッチングプランナーがさがす大学シーズ

先日、愛知の発明の日のイベントにて、青色LEDに関する名古屋大学と豊田合成株式会社(以下「豊田合成」)との産学連携の話を伺いました。

豊田合成が青色LEDの開発に乗り出したのは、名古屋商工会議所で赤崎教授の話を聞いたのがきっかけだったといいます。そして、産学の連携に必要なものとしては目利きの存在だと話します。

大学が持つシーズを探すために全ての大学を聞いて回るわけにもいきません。そこで、JSTでは全国に25名のマッチングプランナーをシーズの目利きとして配置し、地域の企業ニーズと全国の大学発シーズとをマッチングさせる事業を行っているそうです。

 

地域ごとに配置されたマッチングプランナーは、全国の大学シーズを把握しており、全国からニーズにあったシーズを探すことができるとのことです。

さらに、マッチングプランナーもそれぞれが専門分野を持っているため、企業の分野に通じたマッチングプランナーが担当となり、精度の高いシーズ探しも可能となるのだそうです。

マッチングプランナーを仲介することで大学の敷居を低くし、大学のシーズをより使いやすいようにしているのです。中部圏内にもマッチングプランナーがいるので、大学のシーズを探して企業のニーズに合わせて欲しいとのことでした。

産と学が出会う機会を作る

JSTは「イノベーションジャパン」という産と学が出会うイベントを毎年行っているとのこと。

新たな結合による価値の創出をテーマに、500を超える大学の研究者と中小企業等が参加して、その研究成果や開発技術の展示などを行うという、産学連携促進の国内最大規模のイベントです。

自らの目でシーズを探したいという方は、大学の研究者の話を聞くことでいままで気がつかなかった発想に行き着くことができるかもしれません。

目利きに頼るのも一つですし、自分の目を信じて探しに行くのも一つのいい方法かもしれません。

 

出典:『大学の「知」をつなげて産業を生み出す – 科学技術振興機構(JST)の事例』(『発明plus〔旧:開発NEXT〕)


弁理士。コスモス国際特許商標事務所パートナー。名古屋工業大学非常勤講師。1980年愛知県生まれ。名古屋工業大学大学院修了。知的財産権の取得業務だけでなく知的財産権を活用した製品作りの商品開発コンサルタントを行う。知財マッチングを展開し、ものづくり企業の地方創世の救世主として活躍している。著書に『社長、その商品名、危なすぎます!』(日本経済新聞出版社)、『理系のための特許法』(中央経済社)等がある。 特許・商標の活用を応援するWEBマガジン「発明plus Web」( https://hatsumei-plus.jp/ )を運営している。