『品質でもうけなさい』7-5.自立化の仕組みを作る
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7-5.自立化の仕組みを作る
(1)問題解決の成果又は進捗状況を報告する
職場同士で改善内容を参考にすることを目的として、活動の節目節目で活動報告会を催します。
長期的・継続的な問題解決を進めていると、どうしてもマンネリ化して、活動の目的・趣旨を忘れがちになります。
初心に帰ってモチベーションを回復・維持するためにも、このような定期的な報告会は必ず実施しましょう。
検討半ばで問題解決できていない場合でも、現状報告をするようにします。
こういう報告会はみなさん何かと理由をつけてやりたがりませんので、事務局が積極的に動かなければいけません。
注意しておきたいのは、報告会といっても職場内のことですから、あまりプレゼンテーションに懲りすぎるのは考えものです。
ちゃんと章立てさえ明確にしておけば、中身は実際に使った資料をそのまま拡大して用いた方が、活動している実感が伝わって参考になります。
芸術的なプレゼンを作る時間があれば、仕事をした方が良いと思いますよ。
(2)自立化=管理化
さて、報告会なんて話をすると、問題解決は対策を打ったところで終わりのように思われるかもしれませんが、決してそうではありません。
問題解決はやりっ放しにしておくと必ず元に戻りますから、それを防ぐために管理が必要になります。
そのとおり。だから、源流である設計までさかのぼって対策を行ったり、ポカヨケのように自動的に不具合防止する仕掛けを作るのが正解なのです。
しかし、このような抜本的な対策を行った場合でも、放っておくと不具合が再発します。
例えば……
水平展開を確実に実施するために、その変更についての記録を残し、基準として運用する管理が必要です。
これは変更管理です。
あるいは……
ポカヨケが正しく機能しているかを定期的にチェックして、必要な場合はメインテナンスを行わなければいけません。
これは設備保全管理です。
問題解決の成果を維持するためには、変更管理や設備保全管理のほかにも、計量管理や不適合管理などが必要です。
これらは、成果の維持だけでなく、さらにレベルアップする仕組みになっていなければなりません。
自立化とは、これらの管理の中に、自ら問題に気付き自ら問題解決ができる仕組みを作ることです。
また、これらの管理は、個々の問題の対策ではありません。
問題解決にかかわりなく、業務の仕組みとして機能していなければなりません。
したがって、自立化は問題解決の実行部隊でなく、推進委員会と事務局が中心になって進めます。
ガイドラインとしてISO9000が利用できますが、前述したように(3-6.ISOなんて取らなきゃ良かった?参照)、規格にこだわるより問題解決とレベルアップに必要な機能に注目して整備していくのが実戦的な進め方です。
(3)PDCAスパイラルアップ
突然ですが、野球の試合を思い浮かべてください。
相手の攻撃で1アウトランナー2塁、1・2塁間を抜くクリーンヒットを打たれました。
このとき、ピッチャーは自然に3塁側のホームの後方に走っていきます。
これは外野からキャッチャーへの返球をカバーするためです。
良いピッチャーは考えるより先にこの動作を始めます。
厳しい練習で体が覚えているからです。
サッカーでも同じようなことがあります。
左サイドをドリブルでMFが上がっていきます。
それと同時に味方のFWもゴールに向かって走っていきます。
敵のDFが一斉にFWのマークに集まってきて、右サイドががら空きになったところに、味方のプレーヤーが入り込んで、シュートチャンスをうかがう……
良いプレーヤーは瞬間的に次の状況を予測して走ります。
やはり厳しい練習で体が覚えているのです。
野球は表裏9回、サッカーは前後半90分の試合の中で戦略・戦術を凝らしてチームを勝利に導いていきます。
野球もサッカーも頭を使っているのは、試合の大きな流れです。
その途中で起こる様々なアクシデントにいちいち時間をかけて考えていたら、相手に付込まれてしまいますから、練習で必要な対応を身に付けているのです。
さて、改善の参考書にはよく、PDCAを回しなさい、回してスパイラルアップしなさいなんていうことが書かれてあります。
とても大事なことです。
しかし、ただ回せって言うだけなら子供でもできます。
PDCAをどのように回すかが難しいんです。
PDCAの回し方。これが野球やサッカーの例と相通じるのです。
細かい個々の作業までPDCAを回していたら大変です。
細かいところは合理的に自然に体が動くように行って、大きなPDCAをよく考えながらしっかり回していく。
これが、管理システムの考え方です。
ファイターズやドラゴンズ、レッズ、ガンバ……強いチームですが、みんなそれぞれ戦い方もチームカラーも違います。
違うから面白くて魅力があるんです。
同じように、PDCAの回し方は会社によって違いますから、そこに会社の個性が生まれます。
個性は会社の伝統となり魅力となり成長力となります。
4-2.全体最適でないと意味がないで述べたCIと共に、この個性を大切にしてほしいのです。
他社の二番煎じに甘んじることなく、創意工夫して自社オリジナル技術を創造する気概を持って、問題解決とPDCAを回してスパイラルアップしてください。
楽屋裏話 by『面白狩り』編集長
問題解決活動の報告会・発表会のプレゼンテーションを見ると、大抵、対策の説明の後に歯止めとか再発防止という項目を入れて、なにやらゴチャゴチャ説明します。再発防止というのは対策そのものじゃないかと思うのですが、これがよくわかりません。
参考書によく出てくる「QCストーリー的問題解決法」というやつに、歯止めとか再発防止というステップが書かれてあります。
みんなこれに合わせてプレゼンを作るもんだから、どれも同じような発表になってしまうんですね。
そのために、中身より見栄えで競う学芸会みたくなってしまう。
実戦の経験があれば、こんなストーリー仕立てで教科書通りに問題解決できるものでないことは、すぐにわかりますから、こんな発表をワンパターンで続けていると、発表する側も聞く側もだんだん白けてきます。
たとえ立派な改善成果が上がっていても、実務担当者が報告会・発表会をやりたがらないのは当然のような気がします。
報告会・発表会を単なるイベント祭りにしてはいけません。
互いに問題解決の情報を交換する場にならなければやる意味がありません。