各メーカーのコピーの問題

各メーカーのコピーの問題

さて、前回は、「公開が、違法か合法か。その根拠は」と題し、

 

(熟練職人さんの技を各メーカーがコピー)

(そのコピーをメーカーが、自社の開発技術と称して商品化)

(各作業員がお金を払い使用。ペースト)

 

といった内容をお届けしました。

 

皆さんはどのようにお考えでしょうか。

私は、ある程度までは仕方ないと思っていますが、一線を超えた技術は公開してはならないと思っています。

理由は、技術が正確に伝わらないためです。

 

「高度な技術は、職人から職人へ、しかも、この人なら伝えても良いという人にのみ伝授」

人それぞれ、いろいろな考え方があると思います。

 

少し前に、取引先に納品に行った時に、旋盤を使っている職人さんに「こんなバイト売ってますよ」と見せて頂いたバイトに驚きました。

その場でメーカだけお聞きし、後日購入し詳しく調べました。

私が作ったバイトそのものです。この方式のバイトは、私以外にお二方の熟練職人さんしか使っているのを見たことがありません。

 

一人は私の親父より三つ年上、もう一人は、もっと年上です。

私より、一世代か一世代ちょっと前の年代の熟練金型職人さんです。

このバイトを知っている方は、私を含め全て昔の技術を持っている金型職人です。このバイトは挽き物の業界の仕事(作ったバイト)ではありません。

 

昔は、「型屋」と「挽き屋」と言って、「金型職人」と「加工職人」は別に扱われ、金型を加工職人に注文したり、逆に加工仕事を金型職人に注文したりはしませんでした。

金型職人は別格に扱われていましたし、加工職人とは交流もほとんどありませんでした。

 

そんな、貴重な技術が詰ったバイトがあるメーカーから市販されていました。

工具メーカーがこのバイトを開発する技術などあるはずもないので、どこかの金型職人さんから盗んだか、あるいは、金型職人さんが垂れ込んだかしか考えられません。

非常に腹立たしく、また残念です。

 

こんなことをしては、職人の地位は下がるし、技術も正確に伝承できなくなります。

バイトは職人の魂です。「恥を知れ」と言いたいです。

 

1995年頃に、先ほどの二人の熟練職人さんの、年配のほうの方が、高齢で勤めていた会社を退社される時、私に「わしが、考えたバイトをあんたに教えたる」と言って、私に伝授してくださいました。

まさにその時のバイトが今回のバイトと同じ方式です。

ここの会社(職人さん)とは、親父の代からの付き合いで、取引先と言う枠を超えたものがあり、お互い刺激しあってやってきました。

 

私は幼稚園くらいから、親父の車の横に乗って納品などに付いて行ってましたので、この職人さんとは長いお付き合いですので、伝授いただいたバイトをすでに私が知っていることを言えぬまま、「貴重なことをありがとうございます。使わせて頂きます」とお礼を言ったことを覚えています。

 

高度な技術は、職人から職人へ、しかもこの人なら伝えても良いと言う人にのみ伝授。

こうしなければ、正確に後輩に技術は伝わりません。

各メーカーさんも、儲け主義ではなく、業界全体のことを考えてもらいたいものです。

 

各職人さんが長年苦労して身につけた高度な技術や、正確な方法で伝授頂き受け継いできた高度な技術を、お金を払えば誰もが手に入るような仕組みを改めてもらいたいものです。

高度な技術は熟練職人方のものです。それを各メーカーが飯の種にするとは何たることか。

私からすると、無法地帯に思えます。

 

~基本を大切にした技術伝承~汎用旋盤職人養成


1963年大阪生まれ。西尾鉄工所代表。旋盤師、伝統技術継承者◎祖父の代から80年続く大阪八尾市の町工場の三代目。「職人道」を極めた先代のもとで、13才から弟子入りし、昔ながらの職人技を叩き込まれ、家業を一人前にこなした。工業高校卒業後、中堅工作機械メーカーに就職。工作機械(機械部品を産み出す母なる機械。マザーマシンとも呼ばれる)の構造を隈なく学び、23才で独立。最先端コンピュータで制御された「NC旋盤」に対し、職人の「技」と「勘」が頼りの「汎用旋盤」(職人の手で動かす旋盤)をこよなく愛し、現在に至るまで、その加工にこだわり続けてきた。数少ない伝統技術継承者の一人。◎若い世代の人材不足、技術伝承に危機感を持ち、2016年「汎用旋盤職人養成講座」をスタート。教材用に独自開発した「汎用フライス盤」は、設計、加工、組立・調整をすべてひとりでやり遂げ、自身の総合技術力の賜物となった。最近、営業下手な職人の殻を破り、SNSを駆使して「基礎の手技」の重要性を次世代へと訴える。また、異業種の職人を対象に、「いぶし銀の会」を立ち上げ、オリジナル製品の企画、開発など「未来の職人像」を探っている。コンピューター依存が加速する製造業の未来を受け入れつつも、「機械の前に人間ありき」と、代々受け継がれてきた職人の技と精神性の伝承に力を注いでいる。◎2014年「八尾市ものづくり達人懸賞」受賞、2015年日刊工業新聞「マイスターに聞く」掲載、「なにわの名工」受賞◎西尾鉄工所ホームページhttps://nishio-tekkousho.jimdo.com/ 西尾鉄工所技術伝承 https://nishio-tekkousyo.jimdo.com/