個人発明家は売るための工夫をしよう!

個人発明家は売るための工夫をしよう!

必要は発明の母

「必要は発明の母」という英語のことわざがあります(necessity is the mother of invention)。

必要に迫られると、あれこれ工夫をする結果として発明が生まれる、即ち「必要」ということは「発明」の源のようなものだということです。

知的財産制度に詳しい方は「発明」を技術に限定して考えるかもしれませんが、ここでは発明にネーミングやデザインなどのアイデアも含めてもよいと思います。

 

私がこのことわざから思うのは、発明を生み出した発明者は、その発明の母として、発明をしっかりと育てて世の中に羽ばたかせて欲しいということです。

この発明plusには「特許 儲かる」というキーワードで検索してこられる方もいらっしゃいます。

そのように検索される方の中には「特許をとれば儲かる」と考えている方もいらっしゃるようです。

しかしながら、発明は特許などの知的財産権も駆使しながら育てなければ、決して羽ばたいていくことはありません。

発明1

発明を売り込もう

発明を育てるもっとも単純な方法は、自分で作って自分で売ることです。

しかしながら、アイデアを市場に通用する「製品」にまで高めるには個人では難しいです。

 

次に考えられるのは、発明を誰かに製品化し、販売してもらうことです。

そのための前提条件は知的財産権の取得です。

発明(アイデア)は誰にでも真似できるものであればこそ、特許や意匠、商標など、適切な方法で独占権を確保しなければなりません。

これをしないと、無関係の人に真似されたり、商品化の交渉先に優位に立てなくなったりします。

 

前提条件としての知的財産権を整理できたら、その権利をバックに、製品化してくれる事業者・販売してくれる事業者を探します。

ここで大切なのが発明を「育て羽ばたかせる」という考え方です。

よいものを作れば売れるということはほとんどありません。

よいものも売り方を間違えれば沈んだままです。発明を上手くアピールすることが求められます。

商品化までを考える個人発明家は総じて、営業マンでもなければいけないのです。

 

売るための工夫をしよう

僭越ながら私、富澤の発明話を1つ。

私は名古屋めしが流行っていることから誰に頼まれることもなく新しい名古屋めしを考えました。

思いついたのは、赤味噌ロースカツサンドと赤味噌チキンカツサンドをセットにした「赤の他人サンドイッチ」というアイデアです。

このアイデアを持って、サンドイッチを作ってくれる飲食店を探し始めました。探す際には、ストーリーを1枚の紙にまとめます。

 

アイデアのコンセプト
1.商品がわかりやすい図またはイラスト
2.販売価格帯
3.ライセンス使用料等

 

について書きます。

どうすれば自分の可愛い発明が世の中に出ていくのかを考えるのです。

作って売ってもらうということはリスクを負担してもらうことにもなります。

だからこそ売り方まで考えて提案していくことが大切です。

A4一枚にまとめるのは、日常業務に忙しい提案先にも短く簡潔にそして効果的にプレゼンテーションをするためです。

 

今回のサンドイッチは多くの飲食店に当たった結果、あるコーヒーショップが作ってくれる運びとなり、現在共同開発を進めています。

私の発明が羽ばたいていく準備ができたのです。

 

発明は知的財産権を取得するだけでは1円にもなりません。

発明を生み出したらぜひ羽ばたいていけるように育てていって欲しいものです。

個人発明家は営業マンになることが必要なのです。


弁理士。コスモス国際特許商標事務所パートナー。名古屋工業大学非常勤講師。1980年愛知県生まれ。名古屋工業大学大学院修了。知的財産権の取得業務だけでなく知的財産権を活用した製品作りの商品開発コンサルタントを行う。知財マッチングを展開し、ものづくり企業の地方創世の救世主として活躍している。著書に『社長、その商品名、危なすぎます!』(日本経済新聞出版社)、『理系のための特許法』(中央経済社)等がある。 特許・商標の活用を応援するWEBマガジン「発明plus Web」( https://hatsumei-plus.jp/ )を運営している。