令和のFAは「人を活かす」、時代変われど現場はやっぱり「人」が主役

令和のFAは「人を活かす」、時代変われど現場はやっぱり「人」が主役

第4次産業革命やデジタルトランスフォーメーション(DX)によって技術が進化する一方で、社会は「個人」が主役の時代がやってきている。そうした時代における製造業が目指すべき姿とは? FAが果たす役割とは?

「人」を中心に、令和のFAのあり方を考える。

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人とロボットが共存する現場

 

働きやすい現場とは? FAが果たす役割

どんなに自動化やロボット導入が進んだとしても、現場の主役は「人」だ。単純作業や搬送は自動化されても、工程管理や難作業などは人が担い、現場からいなくなることはあり得ない。

そのため、現在もこれからも現場に求められるのは「人の働きやすさと成果を上げること」。それにはFA(ファクトリーオートメーション)技術がどれだけ人に寄り添い、人を支援できるかが大きなポイントだ。

人の働きやすさの根幹にあるのは「安心」の担保。働きやすい現場をつくるには、肉体的、精神的に過度な負荷がかかることがない状態とすることが大前提だ。その上で、人のやる気を喚起し、創造力や気づきのような直感力といった人ならではの強みを活かせる状態であれば尚良。「現場人ファーストの現場」をFA技術で実現していくことが重要となる。

 

ロボットの安全性強化で本当のパートナーに

人手不足が深刻化するなか、ロボットは人の負荷上昇を防ぐ手段として有効だ。特に協働ロボットの活用範囲は広く、20年も話題の中心になることは間違いない。

協働ロボットの売りの1つが「衝突しても止まる安全性」だが、現場の作業者や管理者からは「ぶつかる時点でアウト」「正直怖い」という声が噴出している。いくら安全性が高くても、作業者から見たら機械であり、人とは違う心理的な不安感が付きまとい、それが導入ハードルとなっているケースは多い。

最近はカメラやセンサで可動範囲を監視し、衝突前に検知するアプリケーションが人気だ。また三菱電機のRTRのように検知即回避のような技術も出てきている。ロボットをより人の感覚に近づけて安全を担保し、心地よく働いて作業性を上げるためにも、今以上にFAの活用が大切となる。

 

IoT×FAでミスを減らして気持ちよく働く

IoTが人の作業状況の把握にも使われるケースが増えてきているが、作業者側からは「監視管理されている」「評価の判断材料にされそうで不安だ」など歓迎ではない意見も聞く。IoT導入はやもすると現場にとっては窮屈なツールと認識されかねない。

しかしIoTの本当の使い道は「人がミスをして嫌な気持ちになるのを防ぐ」ことにある。ミスをして平気な人はいない。ミスをすると人は萎縮し、次のミスを誘発する。また上司もミスを指摘するのは本意ではない。

ひとつのミスが周りを巻き込み、そうして生産性が落ちていく。それを防ぐツールとなるのがIoT×FA技術。作業指示や支援を通じてミスの可能性を減らし、同時に作業効率も上げてくれる。

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人が気持ちよく働ける現場に

 

成長を促し、モチベーションを上げるFA

人は感情に左右されがちな生物だ。能力を最大限に発揮し、持続させるためには「成長の実感」が効果的で、そこでもFAとIoTの技術が大きく貢献する。

IoTはデータによって人の現在地を定量化し、可視化できる。さらに、それを分析することで修正点や改善点を発見し、人に成長の余地があることを教えてくれる。言わばコーチやアドバイザー的役割。人はそれを利用することで技術を高め、それまでできなかったことが可能になり、感情やモチベーションの良化につながる。

 

人と経済にやさしい令和のFA

FAはもともと人手作業を効率化するために生まれ、経済合理性を主目的として発展してきた。その裏では副産物として人の負荷を減らし、多くの幸せを作り出してきた。

これからのFAは、経済合理性一辺倒でなく、人の幸せも実現できる「人と経済にやさしい技術」にならなければならない。製造業を魅力ある業界とし、働きやすい現場を構築に向けてFAにかかる期待は大きい。


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。