仕組みなくして人を評価しても反感を買うだけ
仕事の結果に加えてプロセスを評価することで共感を生み組織力が高まる。
仕組みなくして人を評価しても反発を生むだけである、という話です。
1.フォローと評価の仕組みがある現場は元気
現場の自律性や納得感を高め、持続的なやる気を引き出す土壌を整備しようと考えるならば、仕事の結果だけではなくプロセスも対象にしたフォローと評価の仕組みも考えたいです。
ただし、仕事の「プロセス」は管理者があえて見ようとしない限り絶対に見えてきません。
ですから、管理者がプロセスを評価するには手間と技量が必要となります。
手間はかかりますが、現場のモチベーションを高める観点から
現場のリーダーは是非とも実践したいことです。
- 仕事を結果で評価する。
- 仕事をプロセスで評価する
これらは人事考課における代表的な2つの視点ですが、どちらが一方が正しくて、他方が誤っていると言う類のものではありません。
両者のバランスが大切なのであって、それはその企業の理念によって決まるものであり、フォローと評価は人財のやる気を引き出すための重要な役割を果たす仕組みのひとつです。
ですから、フォローと評価の仕組みがない現場では新たに仕組み構築することを、すでにフォローと評価の仕組みがすでにある現場でもその水準をさらにブラシュアップすることを是非とも進めたいです。
フォローと評価の仕組みは持続するやる気を引き出すことと密接に関係しています。
さらに、特に結果よりもプロセスを評価する方が組織力を向上させるのに効果的であると考えています。
プロセスを評価する作業を通じて現場と評価者との間で「共感」が生まれること、また、そうした作業を通じて導かれた結果に対する評価への納得感は高いからです。
モノづくりが本業だけに現場で技術の腕を磨くことは当然、重要ですが、それと同じ水準の意識を持って取り組みたいのがフォローと評価であり、特にプロセス重視の評価を実践することです。
フォローと評価の仕組みの重要性を理解してその仕組みづくりに知恵と工夫を惜しまない現場は明らかに元気です。
2.新たな評価制度を導入した時の話
以前に、それまで人事考課で人財を評価する仕組みが未整備であった現場に新たな仕組みを構築したことがあります。
評価基準を公開したうえで、業務の数値評価を始めました。
そして、その数値評価をした背景を説明するために、必ず説明を上司が記述し、評価点を結果評価とプロセス評価の合算としました。
フォローと評価では結果に加えて、プロセスにも目を配る重要性を当時から感じていたからです。
しかしながら、現実には言うは易く、やるは難しです。
当時、10名程度の作業者が対象でしたが、その評価を導入してからというものの当然に評価者として現場の、それも作業者毎に仕事ぶりをしっかりと把握しなければなりませんでした。
新たな仕組みを導入すると現場に対して大々的に宣言した以上は、こちらもしっかりやりたかったのと、メンバーの大部分が20代、30代の若手人財で占められている当該職場に今一つ不足していた自発性を喚起したいという気持ちから地道に評価作業を続けました。
1年たって初めての個別の評価票を作成、現場リーダーを通じて個別に伝達しましたが、いろいろな気づきがありました。
ひとつには、現場の一人残らず、この評価票に大きな興味をもっていて、特に上司からの記述内容をたいへん気にしていたということです。
自分がかって「部下」として現場で仕事に励んでいた時、上司に声をかけてもらい、叱咤激励してもらったことがどれほど励みになったことかということを思い出した次第。
やってもらったことを、今度は自分がやってあげる立場に立って実践することの重要性を知るとともに、強い現場を持つ企業には、こうした人を評価する文化がしっかり根付いています。
人は自分に興味を抱く人を味方と考える傾向がありますから、現場も当然に、自分の仕事について大いに興味をもってもらいたいと考えているわけです。
現場は上司が考える以上に、自分たちの仕事の状況知ってもらいたい、つまり、適正に評価してもらいたいと思っている……これは、かなり重要な真実と感じています。
このことを理解しているリーダーのもとで結束しているチームは強いです。
また、現場の仕事ぶりを把握する作業が軌道に乗ってくると意外とそれほど多くの労力をかけなくとも十分に情報を入手できることも知りました。
毎日、一声、2~3分話をすれば十分です。
これだけの作業の継続で、現場の掌握が可能になりました。
さらに、評価者として現場の、それも作業者毎に仕事ぶりをしっかりと把握しすることで当然ですが、現場のことがよく見えるようになりました。
それまで気が付かなかった現場の人間関係なども把握できました。
仕事ぶり、つまり仕事のプロセスを把握することで、現場への理解度が高まると共に、共感が生まれ組織力が上がることを実感しました。
黙々と現場で仕事をするだけで、その仕事ぶりに上司が全く興味を示さず、結果だけを提示しても現場の反発を招くのが関の山です。
共感が抜けているからです。
フォローと評価の仕組み、特に仕事のプロセスを評価することに注力することで、評価者の理解度が高まる一方で、現場から共感が生まれることに注目します。
人間は他人に認められたい、つまり評価されたいと考える生き物であることに想いを至らせれば、その重要性にも気が付きます。
また別のモノづくり現場で同様の取り組みを展開する機会がありました。
そこでは、個別の評価票を展開することを通じて、ベテラン作業者が若手人財をOJTで技量を上げる取り組みのきっかけとなりました。
それまでブラックボックスであった評価手法が見える化されることで、自然と自らの評価を上げたい気持ちを喚起したようです。
これは、全く予想をしていなかった現場からの反応でした。
結果のみではなく、プロセスも評価するとで「安心して」頑張れると、現場経験30年以上のベテラン作業者が話していたことを思い出します。
そのベテランは「ぜひとも、若手を評価してやって欲しい」とも言っていました。
やろうとしていることに間違いがないことを確信したのもこの時です。
フォローと評価の仕組み、特に仕事のプロセスを評価することで、
組織風土を変えることができることを知りました。
一方で、そうした仕組みがなく人事考課がブラックボックス化されている現場の若手の声を耳にしたことがあります。
「ウチは結局、現場の事情を把握できていない上のひとが自分の考えで評価をつけているので、自分の想いを伝える機会もなくて……、なんかいまいち、やる気がね。」
他企業に就職した学生時代の同級生の話を聞いて、その若手人財はそんなことを感じたようです。
フォローと評価の仕組みを新たに現場へ導入した経験から言えることは次です。
現場の仕事ぶりを把握する重要性を理解していない管理者の下で、現場は頑張りようがない。
3.フォローと評価の仕組みはやる気と働きがいにつながる
やる気とは働き甲斐にも繋がる重要な仕事上のエネルギーです。
このエネルギーがあれば、仕事が少々辛くても乗り切ることができます。
現場ひとりひとりのメンタルにもかかわる大切なエネルギーでもあることに留意します。
仕組みなくしてヒトを評価することなかれということを肝に銘じたいです。
せっかく縁あって一緒に現場で汗を流してモノづくりに励む仲間です。
管理者も現場も双方で納得のキャッチボールができるようなフォローと評価の仕組みを構築することに知恵と工夫を絞ります。
必ず、自社工場の強みとなり、これは競合も容易には模倣できません。
まとめ。
仕事の結果に加えてプロセスを評価することで共感を生み組織力が高まる。
仕組みなくして人を評価しても反発を生むだけである。
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