ロボットバリアフリー

ロボットバリアフリー

先日、ヒロセ電機のプライベートフェア「ヒロセ技術展(CONNECTION2019)」を見学してきた。さまざまなコネクタを見ることができ、ロボットや産業機器等での採用事例も多く展示してあって大変勉強になった。

3年に一度とのことだが、もう少し頻繁に開催してもいいのかなーというのは個人的な希望。2日間にわたって行われ、とても賑やかなイベントだった。

 

見どころはたくさんあったが、特に興味深かったのが組み立て・配線作業時のミス防止や効率化の工夫を設計に取り込んだ製品群。例えば基板間接続用のフローティングコネクタ「FX23」。XY方向に0.6ミリずれて挿入しても接続時には正確にキチッと嵌まるというコネクタで、その接続の様子を小型アームロボットを使ってデモをしていた。

通常、コネクタのような小さな電子部品をロボットで接続するような場合、微妙な向きや力加減の制御が必要なため、協働ロボットや力覚センサが選択肢になるケースが多い。しかしここでは座標のみでティーチングした通常の産業用ロボットを使い、最後の微妙な挿入具合はコネクタ側のフローティング機構で吸収するというやり方で確実な接続作業を実現していた。

ロボットの性能を上げて頑張らせるのではなく、製品側の工夫で組み立てを簡単・確実にする。会場には同様の製品がいくつかデモ展示され、製品設計側からの効率化アプローチの重要性に気付かされ、とても参考になった。

 

インダストリー4.0以降、生産や製造の効率化や高度化ばかりが叫ばれてきたが、ここに来てその前段階、製品設計の重要性に注目が集まっている。いま世に出ている製品は、基本的には昔ながらの製造工程で作られることを前提として設計されている。

しかし自動化が進むなか、近いうちに製造現場の中心はロボットになる。そうなった時、製品がそのままだと作りにくく、ムダが多いものになる恐れもある。これからの製品設計に必要なのは、ロボットによる作りやすさ。強いて言うなら「ロボットバリアフリー製品」。

幸いなことに、日本には部品メーカー、ロボットメーカー、ロボットシステムインテグレーターが揃っている。これらの力を結集し、部品として最高の品質を持ちながら、組み立てや実装しやすい工夫が盛り込まれた製品を日本発としてたくさん出せたら面白い。


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。