ユニバーサルロボット社長に聞く、「柔軟性」が成長の原動力

ユニバーサルロボット社長に聞く、「柔軟性」が成長の原動力

10年余で世界トップに

2005年の会社設立、2008年の製品販売の開始から、協働ロボット(コボット)の累計販売台数が2万7000台(2018年12月末時点)、世界シェアトップの50%超、グローバル売上高2億3400万ドル、前年比38%増の成長、オンライントレーニング受講者130カ国5万1000人、ハンドやカメラなど認定周辺機器138製品、販売代理店270社と急成長を遂げたユニバーサルロボット。

協働ロボットという新しい製品分野を開拓し、わずか10年あまりでトップ企業に駆け上がった。その歩みと直近の戦略についてユルゲン・フォン・ホーレン社長に聞いた。

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▲ユルゲン・フォン・ホーレン社長

当社技術に合わない企業はない

-発売開始から10年を迎えました。この10年は成功でしたか? 失敗でしたか?

最初に言えるのは、とにかく一生懸命に頑張った10年だったということ。成長をするためにチャレンジをし、コボットという新しい市場を作ってきた。

10年を振り返るといくつかのステージがあった。初めの2~4年は起業して会社を生存させる段階、5~7年は販売促進を強化し、市場シェアを取り、グローバルに提供していくステージ。直近の3年は未来への布石を敷く段階を通過した。もはや私たちはスタートアップではない。これまで積み上げてきた基盤がまとまってきた。

 

-累計販売台数2万7000台。ここまでユーザーに受け入れられた理由は何でしょうか?

当社の製品は開発段階から、大企業でも中小企業でも事業規模や業界を問わず、あらゆる企業に使ってもらえることを念頭に置いている。当社の技術に合わない企業はない。

これまでの産業用ロボットは複雑で難しく、人間の仕事を代替する役割を果たしてきた。しかし当社の製品は、ハンマーやねじ締めのドライバーと同じ、極めてシンプルなツールだ。短時間で設置でき、プログラミングも容易。とにかく簡単に使え、人に力を与えること。これに尽きる。

人は力を授けられると、自分で考え、さらに責任感を持つようになる。こうなると作業現場が変わり、ボトムアップで自動化を進めていけるようになる。そこに多くの人々が賛同してくれた。

 

-逆に10年で難しいと感じたことは?

毎年40~50%の成長を続けるというのは普通ではない。あらゆる部門が常に変化し、市場に対応していくことがとても大変だった。また人材確保についても、いま620人の従業員がいるが、うち300人以上が社歴1年未満だ。素晴らしい人材を探して入社してもらい、さらに常にハッピーな状態を継続する。それを実現するためにいくつかのチャレンジを行った。

当社の1年はまるでドッグイヤー。1年過ごすだけで7年が経過したかのように感じることが多々ある。当社は今の生産現場のあり方を破壊的に変えていくことを目指している。これは他にはないチャレンジで、大きなチャンス。世界を変えるという情熱を持ってチャレンジに向かっている。

 

-直近の業績について教えてください。

18年は世界でさまざまなことが起き、不安定になっている。当社も前半は堅調だったが、第四半期(10月-12月)は鈍化した。

結果として18年のグローバル売上高は2億3400万ドルで、成長率は38%増だった。地域別では、北米が前年の51%増の6900万ドル、欧州が37%増の1億700万ドルで、APACが25%増の5800万ドルだった。

 

-これからの市況をどうみていますか?

市況的には追い風でチャンスだと思っている。多くの企業が5年先の予測すら難しくて立てられない一方で、競争力を維持するために将来に向けた設備投資を必要としている。そこでポイントとなるのが「柔軟性」である。

コボットは作業を自動化しながら柔軟性を担保でき、生産ラインが変わっても再利用できる。またプログラムを変えれば1日でいくつもの作業を担い、有効に時間を活用でき短期間でROIを出すことができる。

最新の調査では、コボットは17年から21年にかけて43%の伸びで成長し、25年には90億ドルの市場になると言われている。競合企業が出て、彼らがマーケティング活動を強化することでコボットの認知度が高まり、市場はもっと広がっていくだろう。当社は市場シェアを重視し、少なくとも50%は維持していきたい。

予測し得ない変化に対応できる

-具体的な戦略について教えてください。

これからの成長には、製品や技術だけでなく、ビジネスモデルも含めてどのように市場を作り出すかの戦略が重要だ。そのための要素として、サービスと、イノベーティブな企業文化、販売代理店やSIerなどとのパートナーネットワーク、無料のオンライントレーニングで使い方を学べるURアカデミー、サードパーティーに周辺機器を開発してもらうUR+の6つがあり、これらを強化していく。

パートナーネットワークでは、19年内にグローバルで代理店数を300に、SIer500社を目指したい。

全領域に進めていくかが、特に当社の製品と親和性が高いのが中小企業。ここをスイートスポットと考えている。

 

-日本を含め、世界中で第4次産業革命が進んでいますが、どう見ていますか?

日本は当社にとってトップ5に入る重要な市場で、大きなチャンスを秘めている。もっとも自動化が進み、世界の先頭を走ってきた。日本に来るといつも、プロセスやオペレーションといったものづくり現場の中に強みがあると感じる。カイゼン文化はとても素晴らしく、日本の強さの原動力だが、今それを時代に合わせて変えていく必要がある。そうすればもっと日本の製造業は強くなれる。

予測し得ない変化に対応できる柔軟性がこれからの成長の原動力になる。日本も同じだ。

 

-今後について教えてください。

よくメディアは「ロボットによって仕事がなくなる」と言うが、世界の製造現場を巡っていると、どの国にも共通しているテーマがあることに気づく。それは「人材不足」だ。ヨーロッパもアメリカも、メキシコも、アジア地域など、世界中のどこも人手不足の問題を抱えている。

私たちは第4次産業革命の次、第5次産業革命を見ている。製造現場の主役がまた人間に戻ってくる時代が来る。人が主役になることでオペレーションが飛躍的に進化を遂げる。そこを目指している。特に親和性が高いのが中小企業。ここがスイートスポットだと定め、力を入れていく。

10年間、ここまでの道のりは簡単ではなかった。失敗もした。しかし当社にとって変化は日常の出来事である。それを学び、共有することが大事だ。社員には一生懸命、スピード感を持って、楽しんで仕事をして欲しい。その上で破壊的な変革を起こしていきたい。

日本市場も好調

セミナーや新サービス 普及・導入を強化

ユニバーサルロボットは、1月から日本オフィスを東京都港区芝2丁目28-8芝2丁目ビル14階に移転し新たなスタートを切った。新オフィスには実機に触れながら座学で学べるセミナールームと、実際のアプリケーションに合わせたシステムを組んで試せるアプリケーション室を備え、より実践的な普及・導入活動を強化する。

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2018年の日本における事業活動は順調。山根剛ゼネラルマネージャーによると、無料のオンライントレーニングであるURアカデミーは毎月100人を超える人が受講し、累計で1000人を突破。SIerについても、6月からUR認定SIerを育てるSIer育成プログラムを開始し、現在15社が受講中。19年中には当プログラムを受講する会社を50社まで増やしたいとのこと。

19年は認知・普及活動をより一層強化。第一弾として、エンドユーザーのアプリケーション構築を手助けするオンラインサービス「アプリケーションビルダー」の提供を開始する。ホームページ上で簡単にCNCマシンテンディング、ねじ締め、パッケージ&パレタイジング、品質検査のアプリケーションを構築でき、プログラムのテンプレートも提供されるというもの。先行して開始した英語版はとても好評だという。その日本語版が近日リリースされる予定となっている。

他にもアプリケーションルームを使ったアプリケーション開発のサポートの他、日本メーカーによるUR+機器の開発支援にも力を入れる。すでに日本メーカーによるUR+機器の開発が進んでおり、年内に登場する見込みだ。

またe-Seriesの日本語化によるオンライントレーニング、認定トレーニングセンターによるトレーニング提供を行っていく予定だとしている。

参考:ユニバーサルロボット


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。