マスカスタマイズを楽しむ文化

マスカスタマイズを楽しむ文化

外出自粛でめっきり外出する機会が減ったが、それでも時折、日用品の買い出しにスーパーマーケットなどには顔を出す。

店内を歩くとお客も店員もほぼ全ての人がマスクを着用し、色や柄付き、はたまた自作とおぼしきマスクも見かける。

マスク着用が当たり前になってしまっている状況はつらいことだ。しかし視点を変えると、個性的なデザインのマスクが流通し、多様な価値観を生み、新たなマスク文化が醸成された点は興味深い。不織布でできた白色マスクだけだった時から比べて華やかになった。

 

画一的な大量生産品から、個人の趣味嗜好に合わせた多様な製品へ。第4次産業革命のこれからは、マスカスタマイズの時代と言われる。

製品を提供するわれわれメーカー側は、数年前からそれを実現できる生産体制の構築に向け試行錯誤を繰り返している。自動化やロボット活用、設計から製造、保守サービスまで一貫したデータ活用などだ。まだ未完成で実現にはもう少し時間がかかりそうだが、うっすらとそこへの道は見えてきた。

次のステップは、市場に対してマスカスタマイズができることの認知と楽しむ文化の拡大、いわゆる「啓蒙」だ。草の根で広がるカスタム文化をどうメジャーにし、ビジネスにするか。新たな価値の創造はメーカーの役割だ。

 

マスク需要の逼迫から、個人や企業がさまざまな材料や手段を駆使して個性的なマスクを生み出し、人はそれを気にせず着用するようになった。「マスクはこうでなければならない」という前提が崩れた瞬間だ。

これは「マスク」という限られた領域のごく一部の事象ではあるが、こうした小さな積み上げが多様性を広げ、マスカスタマイズの実現に近づけていく。災厄は決して歓迎しないが、その経験は人の思考と行動を大きく変える。

アフターコロナでもマスカスタマイズは着実に進む。そこへの仕掛けを途切れさせてはいけない。


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。