フエニックス・コンタクト「PLCnext Technology」IT+OT融合を加速
ワンランク上の自動化実現
新たなデジタルビジネス創出
自動化制御に適したシーケンス制御と、データ処理に優れ、デジタル化と親和性の高いIT技術。この2つを融合し、もうワンランク上の自動化を実現するのがフエニックス・コンタクトのPLCnext Technologyだ。
2018年のハノーバーメッセに合わせて発表され、多くの事例が出てきている。ITとOTの垣根を取り払い、さらに新たなデジタルビジネスを創出するPLCnext Technologyを紹介する。
PLCnextとは
同テクノロジーは、産業用PC、WEBサーバーを融合したコントローラとソフトウエアを中心に、IoTやAIといった最新で便利なIT技術を、伝統的な自動制御に容易に取り入れることができる、新しいコンセプトの自動化基盤だ。
デジタル化はITとOT(Operation Technology、自動化を含めて製造現場で使われている各種技術)の融合がカギと言われる。
IT技術者が自動化などOT技術をどう使いこなすか。逆に、機械や電気、メカトロ系のOT技術者がITをどう取り入れていくか。しかし両者間の技術的な溝は大きく、それを埋める技術として生まれた。
IT・OT両者に開発環境も対応
コントローラは、PLCの特長である正確で信頼性の高いシーケンス制御と、PCの強みである対応のオープン性や柔軟性、拡張性を兼ね備え、WEBサーバーによって情報の取り扱いにも優れている。
モーション・ドライブやセンサなどOTのフィールド機器と、スマートフォンやPC、タブレットなどIT機器、それらに組み込まれているソフトウエア、ネットワークとの接続性が高く、それらの機器とつながるハブ、頭脳を担う司令部の役割を果たす。
開発環境はITとOTの両者に対応。従来のPLCと同じくラダー言語で組んだプログラムを使えるほか、C言語やC++といったコンピュータプログラミング言語、MATLAB SIMULINK、Microsoft VisualStudio、Eclipseといった開発環境で作った制御プログラムも動かすことができる。
また無料で使える開発環境「PLCNEXT ENGINEER」を使えば、プログラムを直打ち、ビジュアルでも制御プログラムや画面設定を簡単に行うことができる。
IT技術者でもシーケンスプログラムが組め、その逆もしかり。お互い得意なプログラム言語を使えることでプログラム設計のハードルを下げている。またハードウエアとの高い接続性によって装置やシステム設計もしやすくなっている。
すでにヨーロッパでは同テクノロジーをベースとしたソリューションを展開し、数多く採用されている。例えば、風力発電における羽根にかかる力の検知とコントロール。羽根に負荷がかかり過ぎると破損の原因となり、その防止と発電量の最適化システムを同テクノロジーで構築。
また本社であるバッドピルモント工場は、同テクノロジーをベースとしたビルオートメーションのシステムで構築され、高度なエネルギー管理が行われている。
管理・メンテ工数大きく削減
国内では新たな「見える化」提案
また国内では、PLCnextコントローラと5月に発売したHTML5対応のウェブパネルを使った、効率的な製造装置の見える化ソリューションの提案を開始している。
これまで製造装置の稼働状況の見える化は、製造装置に取り付けられたパネルコンピュータやHMIが担ってきた。しかしそれらの機器自体が高価な上、メンテナンスなど管理は個々の機器単位でやらなければならず、大きな手間がかかっていた。
それに対し同ソリューションでは、コントローラのWEBサーバー機能で情報と機器を一元管理し、シンクライアント表示器となるウェブパネルは情報の入出力だけに特化。これにより機器ごとの管理が不要になり、管理・メンテナンス工数を大きく削減できるようになっている。
同じ情報はスマートフォンやタブレット、オフィスのパソコンでも表示でき、画面を通じた機械の入力操作にも対応。遠隔から現場と同じ情報と制御が共有できるようになっている。
風力発電の羽根の管理やビルマネジメントのベースとなったプログラムは、汎用アプリケーションとして同社のアプリストア「PLCnext Store」で販売中。スマートフォンでいうAppStoreやGoogle Play Storeと同じで、アプリをダウンロードして機器と組み合わせれば同様のシステムが簡単に構築できる(日本での利用は準備中)。
開発したアプリストアで販売可
またアプリストアでは、ソフトハウスが作ったアプリを掲載して販売も可能。PLCnextとAWSやIO-Linkをつなぐための機能アプリなども世界に向けて販売できる。
PLCnextは自動化システムを効率的に構築できるだけでなく、そのシステムを作って提供する側にもチャンスを提供する、新たなビジネス基盤としての顔も持っている。
IMA統括本部 マーケティング部 大野忠久部長は「これまで自動化や制御に縁のなかったIT企業が、自らのアイデアで作ったプログラムを世界に向けて販売できる。いま世界も日本もシーケンスプログラムより、IT系のプログラムを書ける人数の方が多くなっている。さまざまなコミュニティもあり、その開発能力を生かすことができる。ぜひ多くのIT技術者に自動化制御にチャレンジしてほしい」としている。