バブル崩壊とグローバル化後遺症・『若者パワー』と『国際化』

バブル崩壊とグローバル化後遺症・『若者パワー』と『国際化』

最近のメディア報道は、きな臭い話が多い。

事実、世界では不気味な事件が多発しており、地球規模の経済危機も予想され、世界中の人々が不安を抱いている。

日本国内でも、日銀の政策失敗やアベノミクス失敗の声が満ち溢れ、メディアは政府の巨額借金問題や人口減少問題などを題材に、『日本亡国論』を論じており、国民の不安は募るばかりである。

 

その中味は、『大変だ!ヤバイぞ!』に終始し、出口の見えない報道が大半である。

アベノミクスも重要ではあるが、日銀の金融政策などが、本質的な根本的解決になるはずがない。

『ものづくり大国、日本』の権威回復こそが、日本の戦略である。

 

日本が世界に誇る『ものづくり遺伝子』を再び目覚めさせ、『ものづくり日本』として世界に再び花開く事が、我々日本人に出来る現状打破の具体策である。

この戦略に最も必要なことは、『若者パワー』である。

『希望と勇気』に満ち溢れた『若者パワー』なくして日本製造業の再起動を描くことは出来ない。

 

日本の人口構成は、誰でも知るとおり『老人増加・若者減少』のため、年配者の声が大きくなりがちである。

『草食系だ! ゆとり世代だ!若者は車にも興味がない!』と言った若者批判の言葉の流行がこれを物語っている。

人々の意識構造は、時代の影響を強く受けるのは当然であるが、特に日本の中では『年配者』と『若者』に異なる潜在概念が存在している。

 

『年配者』の多くは、かつての高成長時代を企業戦士として生き抜いた人々である。

かつての、輝かしき成果が、自分の勲章として記憶に刻まれ、誇らしく思っており、『あの時代は良かった。あの時代に戻したい』というバブル以前への回顧が潜在している。

年配者を支えた良き時代は、バブル崩壊で終止符を打ったが、バブル崩壊1990年代から今日までの20年余りを、メディアは『失われた20年』と断じ、この言葉が社会通念となっている。

 

これからの日本を背負う若者たちは、バブル崩壊も知らず、社会人となった人々である。

若い彼らにとっては、『失われた20年』の表現は適当ではない。

彼らは何も失っていない。

 

彼らが社会人となってから、世界中でデジタル革命が芽生え、地球規模でイノベーションが進行し、これに馴染んできた世代である。

進化した『若者パワー』が、日本の未来に重要な人材である事に疑いの余地はない。

バブル崩壊への被害者意識を持たず進化する若者達と比べ、残念ながら年配者には依然として強い被害者意識が潜んでいる。

 

『失われた20年』と声高に叫ぶ年配者には、『誰かのせいで、日本経済はだめになった。』と、常に『誰かのせいにしよう』とする意識が非常に強い。

大企業のエリート年配者の間には、組織とタイトルにしがみつき、失敗を恐れ何もせず、20年の時間を浪費してきた御仁も決して少なくない。

バブル崩壊によって日本の大手製造業は別の企業になってしまった。

 

かつての製造業現場では、年配者と若者が同じ企業村に錨(いかり)を下ろし、同じ目標に向かって、お互いの役割を遂行し、強力な協力関係を築いているのが、日本企業の姿であった。

なぜ、日本企業の姿が変わってしまったのか? 

結論を先に申し上げると、『グローバル化の後遺症』が、その大きな原因である。

 

グローバル化やオープン化の戦略は、米国にとっては極めて都合が良い反面、日本にとっては失うものが多い。

しかし残念なことに、バブル崩壊が日本経済を恐怖に陥れた結果、猫も杓子(しゃくし)も『グローバル化』を叫び、大手製造業は世界中に人・モノ・金を投資し、馴染めない(米国人の)企業経営を神のように崇め盲従した結果、盤石であった国内組織にほころびが生じた。

家電業界の悲劇的敗退がこの結果であり、今後あらゆる業種に及ぶだろう。

 

グローバル化とは、国を意識しない多国籍企業に通じる。

世界中の民族を雇用し国際活動を構築することである。

日本人にグローバルマネージメントが出来る人材は稀である。

 

米国人が得意とする範疇(はんちゅう)の真似ごとで勝てるはずがない。

世界で仕事をすると、簡単に気がつく事実である。

バブル崩壊以前の日本企業は、世界市場を相手にする『国際化』企業であった。

 

『国際化』とは、国が強く意識される。

日本に錨を下ろし、盤石な組織を国内に構築しながら、世界中の国と取引をすることを『国際化』と呼び、『グローバル化』とは根本が違う。

国際化とは、決して古めかしい言葉ではなく、日本のものづくりには『グローバル化』ではなく『国際化』が必要なのである。

 

日本には多くの優秀な若者が居る。

大企業の中にも、地方の中小製造業にも多くの人材が潜んでいる。

埋もれがちな彼らに活躍の場を与え、『希望と勇気』に満ちた若者を育成するためには、日本に錨を下ろす意義そして、歴史と文化を教えなければならない。

 

国際社会での活躍には、日本人としてのアイデンティティーが非常に重要である。

日本は何百年の歴史に育まれた、世界に類のない製造大国である。

日本の若者が、『日本のものづくり』の本質を学び、誇りを持って日本のものつくりを世界に発信することが出来たら、日本の製造業は再び復活するであろう。

 

他国の戦略に操られた経営方針から脱皮し、グローバル後遺症を癒やし、本来の健康体に原点回帰すべきである。

日本の若者が国際的に活躍する時代の到来。

世界に従うのではなく、世界を従わせる若者の誕生を心より期待する。


株式会社アルファTKG社長。1953年長野市生まれ。2014年3月までアマダ専務取締役。電気通信大学時代からアジアを中心に海外を訪問して見聞を広め、77年にアマダ入社後も海外販売本部長や欧米の海外子会社の社長を務めながら、グローバルな観点から日本および世界の製造業を見てきた。 http://a-tkg.com/