ハイプ・サイクルを活用せよ

ハイプ・サイクルを活用せよ

ある3Dプリンタメーカー曰く、3Dプリンタはハイプ・サイクル上の幻滅期を抜けたという。2010年頃に「何でも作れる夢のマシン」とも言われて一家に一台の時代が来ると喧伝もされたが、現在は産業用途で着実な普及が進んでいる。

設計開発部門の試作工程では浸透し、今は上位機種への買い替えや追加導入のサイクルに入っており、これからは製造や保守サービスへと広げていきたいとしている。

またあるロボットメーカーは、協働ロボットはハイプ・サイクル上の期待のピークには達していないとし、幻滅期になる前に失望が最小限になるような手を打たなければ、せっかくの需要熱が冷めてしまうと懸念していた。

彼らが共通して使うワード「ハイプ・サイクル」とは一体何なのか?

 

ハイプ・サイクルは、ガートナーが定期的に発表している先進技術のサイクルのこと。縦軸を市場の期待度、横軸を時間とし技術が登場して普及するまでの動きを視覚的に表している。

ほぼすべての技術は、登場して市場に認知され(黎明期)、ある段階から急に注目を集めるようになって、興味本位を含む多くの人を巻き込んで期待が先行して夢が膨らみ(過度な期待のピーク時)、その後、技術の理解が進むと期待が萎み、人も離れて、関心が急落する(幻滅期)。

底を打った後は、現実のユーザーや技術を必要とする人、関連する人、関心を持ち続けた人に向けた再認知、理解度を高めるフェーズに入り(啓蒙活動期)、そこから徐々に普及が進み、現実的な普及曲線を描くようになる(生産性の安定期)。ピークから幻滅期に入った時はまるでジェットコースターのような落ち方をする。しかしそれを乗り越えた先に本当の普及が待っているとしている。

 

人生は山あり谷あり。製品・サービスも同様だ。客観的に見て、自社の技術や製品がどういった段階にあるのか? それを理解・把握しなければ適切な戦略は立てられない。

木を見て森を見ず、森を見て木を見ずになってしまっては進むべき道を見失う。目の前に集中すると、客観や俯瞰はおざなりになりがち。

ハイプ・サイクルのような超俯瞰的な見方から、市場や見込み顧客の現状を鑑みた見方、自社の製造や営業の現場から見た見方、多面的で多層的な見方を忘れてはいけない。


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。