[トップインタビュー]OKI電線 小林 一成新社長に聞く「チーム一丸で相乗効果」
ロボットケーブル好調続く
産業機器向けワイヤーハーネスやロボットケーブル大手のOKI電線。自動化やロボット需要の高まりを背景に好業績が続くなか、2018年度からはEMS事業の強化の一環としてOKIの完全子会社となり、新たなスタートを切った。4月1日付で新社長に就任した小林一成社長に話を聞いた。
—— 自動化需要が高まるなか、業績はいかがですか?
事業の柱となっている機器用ケーブルは、高可動性と高速伝送という当社の特徴が高く評価され、特にFAやロボット向けが好調だ。国内はもとより海外からの引き合いも増加してきている。
—— 昨年OKIの完全子会社になることが発表されました
いまOKIではEMS事業を再編・強化して、2022年度に連結売上高で1000億円を目指している。
OKIのEMS事業は、メード・イン・ジャパンの国内生産、ハイエンド領域に特化した特色あるEMSとして、数多くのお客さまのご要望にお応えしてきた。今回の再編により、キーコンポーネントのOKI電線、規格試験と信頼性評価のOKIエンジニアリングとカスタム電源メーカーのOKIテクノパワーシステムズもEMS事業本部に加わったことにより、回路設計から製造、評価試験、アフターサービスまでワンストップで提供できる体制がさらに強化され、他社のEMSとの大きな差別化が進んだと言える。当社は「チームOKI」の一翼を担う役割になると同時に、シナジー効果も期待している。
—— 具体的にはどのような効果を見込んでいますか?
例えば、OKIの製品にもっと当社のケーブルを使ってもらうということもだが、本丸はあくまでもEMSだ。EMSのお客さまの認知度を上げ、当社のケーブルを採用していただくことによって、連結売上への貢献が期待できる。
また、いま当社ではFPCの拡販に力を入れている。FPCは曲がり、伸縮して使い勝手が良く、ウェアラブルや機器の小型化などでさらに拡販できると見込んでいる。実際の製品を見て、触れてもらうため、当社の営業はサンプルボックスを持って客先で提案して回っている。そのやり方を当社以外のEMSグループの営業にも協力してもらって、販路を広げていきたい。
一方、当社のお客さまに対してOKIのEMSを紹介していくことにも力を注いでいく。OKIグループのEMS顧客と従来からのOKI電線のユーザーとは、意外にも重ならないケースがかなりあることが分かった。そのなかで外部に設計・製造をまかせてもいいという企業は必ずある。そうした企業に対して、当社からOKIのEMSを提案することで受注のチャンスは広がる。ケーブルと比較すると、EMSは案件あたりの金額が大きく、EMS事業拡大に大きく貢献できると感じている。
—— 子会社化に対する社内の反応はいかがですか?
1936年にOKIから分離独立し、長い間ずっと独自路線でやってきたが、82年目に再び一緒になった。これだけの年月を経ても社風が似ていることもあって、社員の反応はおおむね肯定的だが、なかには上場会社であったことへのプライドとともに郷愁を覚える人もいるだろう。
しかしいま必要なのは、この大きな変化をきちんと理解し、心を一つに前向きに取り組むこと。私が最初にやるべきことは、新しいOKI電線としての方向性を示し、チームOKIの狙いを正しく理解してもらい、全社員のマインドを高く保ち前に進めることだ。OKIのリソースはどんどん利用していきたい。長く人事や総務関連を担当してきた私の経験が生かせるだろう。
—— 今後について教えてください
多くの場合、ケーブルはつながりさえすれば良いという感覚で使われがちだ。しかし、FAやロボット等では、複雑な動きを何度も繰り返すとねじれやクセが付き、そこから断線して稼働停止の原因となることがある。しなやかさと強さを併せ持った品質こそがケーブルの競争力であり、当社はそこにこだわりを持っている。
ねじりでの耐久性を極めたロボットケーブル「ORP-TWケーブル」
製品としては高可動性と高速伝送という強みをさらに伸ばしていく。そのための設備投資として16年から毎年、10億円規模の設備投資を行い、今年も同等程度を計画している。老朽化した設備の更新と増産対応に加えて、R&D投資も積極的に行っていく。
今回の子会社化により、OKIのEMS以外の事業や仲間ともシナジー効果を出していける体制になった。当社自身も大きく成長できるきっかけになると考えている。チームOKIの一員として前向きに明るく、みんなで頑張る。私はそれを率先垂範していきたい。