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[トップインタビュー]セイコーエプソン ロボティクスソリューションズ事業部 吉田佳史事業部長に聞く

「省・小・精の技術」に強み

世界的な自動化の波に乗り、需要が拡大している産業用ロボット。スカラロボットや垂直多関節ロボットなど、中小型ロボットの領域で存在感を発揮するセイコーエプソン。2017年度の売上収益は前年度比40%以上増を見込み、25年度1000億円の目標に向けて順調に推移している。現状について同社ロボティクスソリューションズ事業部 吉田佳史事業部長に話を聞いた。

エプソン_吉田事業部長

前年比40%超増と絶好調

 

—— 2017年度の状況はいかがですか?

売り上げ、台数ともにいい状態で進んでいる。17年度は前年の40%以上増の250億円まで行く見込みだ。スマートフォン部品、リチウムイオン電池の中国ローカル企業への販売拡大と、自動化要求に対するソリューション提案で市場の伸びを上回る受注を獲得できた。

いまロボット市場はにぎやかで、製品さえあれば売れる状態。一部の部品に納期遅れが発生しているが、設計の前倒し、早めの発注で対応をしている。

 

—— 世界の市場の状況について教えてください。

中国のスマートフォンや電池メーカ、台湾のEMS、ASEANでもマレーシアやベトナムの液晶パネル工場などからの受注が増えている。特に中国は成長市場である一方、国内のローカル企業の生存競争が厳しい。現場の自動化がどれだけ進んでいるかが受注の決め手になると言われ、自動化への熱意はすごい。10年先を考えて投資を行っている。

また最近、ロボットに熱心なのがシンガポールだ。国が積極的に企業誘致や導入支援、教育に力を入れている。特に国内でロボットシステムインテグレータを育成し、ロボットを使う側からのアプローチを強めている。

ヨーロッパは自動車関係の受注が多い。ドイツだけでなく、東欧や西欧などヨーロッパ各地で需要が盛り上がっている。

 

—— 好調な製品はどのあたりですか?

3月に市場投入したコントローラ内蔵型スカラロボットの「T3」は、設置が簡単でコストパフォーマンスの良いエントリーモデルで、当初の想定を大きく上回る人気となっている。これから発売を予定している可搬重量6キロの「T6」も、お客さまに待ってもらっている状況だ。

スカラロボット_T3
スカラロボット「T3」▲

 

小型6軸もスマートフォンなどIT部品向けに大きく伸び、2018年度投入予定の製品だが、特に低価格な「VT6」への引き合いも多い。

賃金の高い・低い地域に関係なく、人不足が世界共通の問題になっている。単に右から左にモノを運ぶだけのような、ロボットとしては安くて性能の低いものでも十分なローエンドの市場ができつつある。当社も含めて日本や欧米のロボットメーカーは高速・高精度の市場をメーンとしているが、ある程度の性能と価格でも良いという市場は今後も増えていく。そこは無視できない。

 

—— 日本国内の状況は?

力覚センサーが好調だ。力覚センサーが世界で一番売れている市場が日本だ。力覚センサーは使い方が少し難しいが、日本は使う側のレベルも高く、さまざまな活用例が出てきている。日本で力覚センサーと6軸多関節ロボットの用途、アプリケーションを開発し、新たな市場の開拓と海外に展開しようと考えている。

製販一体の顧客サポートも好評

 

—— 18年度見通しは?

今年と同じような勢いと見込んでいる。

当社は、省エネ、小型化、高精度といった「省・小・精の技術」を強みとし、ウオッチ、プリンタ、電子部品、プロジェクタなど精密機器から汎用機器まで多彩な製品を製造している。その扱い製品領域の広さから多くの自動化のノウハウが社内に蓄積されており、特に中国ローカル企業からはその部分での評価が高い。

その強みを生かすため、3年前から中国で製販一体の顧客サポートをスタートした。現地製造法人の技術者と現地販売会社、日本がチームとなり、顧客を当社の工場に呼んで現場を見てもらう、技術者を顧客の工場に送り込んで膝詰めで話をする、要望に応じた仮の設計図面の作成や試験的なシステム構築を行うなどの取り組みをしている。自動化の最新工場が見られる上、技術に明るく、現地語でコミュニケーションできる人材が対応することもあって顧客の満足度は高い。案件の進みも早く、大きな効果を上げている。

また、ここで作成した図面やテストシステムの情報は、後工程を任せる現地のSIに提供している。ロボットシステムを構築する際に手間がかかるのは要件定義と設計図面の作成であり、そこの大部分を当社が代行する形になっている。SIは詳細の詰めとシステム構築、立ち上げから安定稼働といった本来の得意分野に力を注ぐことができ、大変喜ばれている。販売を増やすためにはSIの協力は不可欠であり、テストに取り組むことで当社にも技術的なノウハウが蓄積され一石二鳥だ。今後、この取り組みを他の地域の現地法人にも広げていきたい。

 

参考:エプソン


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。