デジタル化&自動化へ加速、コロナ禍で見えた必要性

デジタル化&自動化へ加速、コロナ禍で見えた必要性

2020年は新型コロナウイルスの感染拡大によって世界中が大混乱に陥り、製造業も多くの業界で冷え込んだ。FA業界も例外ではなく、業績悪化によって企業の設備投資が中止や延期になり、厳しい1年となった。

2021年も景気は回復途上で厳しい状況が続く見込みだが、一方で明るい兆しもある。コロナ禍で自動化やデジタル化に対する必要性・理解度が高まり、1年で1歩も2歩も前進したことだ。その意味では、21年は自動化・デジタル化に向けた再スタート、FA各社にとっては期待が大きく、チャンスの年になる。

SONY DSC
進むファクトリー化

 

withコロナは自動化、デジタル化がマストな時代

何年先になるか分からないが、未来の工場はロボットなど各製造装置が自律運転を行い、生産のすべてを担う完全自動化の無人化工場になる。これは間違いないだろう。FA業界はこれまでそれに向けて技術やサービスを進化させてきた。

古くはT型フォードのライン生産に始まり、FA・自動化技術は大量生産によって製品を安定した品質で安く早く大量に作り出し、生活レベルの引き上げに大きく貢献した。またキツイ・汚い・危険のいわゆる3K作業から人を解放した。さらに近年は、人の作業の手助けや熟練技術者の技を継承し、より高品質なものづくりの実現なども可能にしている。

いよいよ21年は次のステージへ。自動化に必要な技術がそろい、コストもこなれてきた。人が中心の現場から、ロボットや自動機など機械を中心とした製造現場へ本格移行するのに適した環境が整ってきている。さらに、コロナ禍によって人が動けなかったことで生産が止まり、人が中心であることがクリティカルなリスクになることが露呈した。企業にとっては人が稼働停止のリスクになり、従業員にとっても多くの人が密な環境で働く工場は感染可能性が高く、そこを避けるようになるのは必至だ。人からロボット、機械へのハードルは下がり、そこへの関心も高まっている。

これからの工場は、完全自動化の無人工場、いわゆるスマートファクトリーが目標地点となるのは変わらない。しかし、そこに向かうスピード感、取り組みの強化はこれまでとは異なる。withコロナでは、自動化は「may」ではなく「must」。顧客を守り、従業員を守り、会社を守るためにも、自動化を進め、省人化、無人化へのスピードを高めることが最重要事項だ。

アタマDSC08754
ロボットとAGVはキーコンポーネンツ

 

デジタル・自動化の効果を実感した中小製造業

自動化は今に始まったことではない。何十年も前からその必要性は叫ばれ、近年は特に第4次産業革命やインダストリー4.0、DX(デジタルトランスフォーメーション)という形で、工場だけでなく、さまざまな業務やシステムで自動化がトレンドになっていた。

しかし実際にその旗を振り実践できていたのは大手企業を中心とするごく一部の先進ユーザーやメーカー、ITベンダー。製造業の99%を占める中小企業は、その言葉や理念は浸透しても、実際に取り組むのはまだ先の話で、今まで通り変わらないがほとんどだった。

それがコロナが発生し、経済が止まり、業務が止まった。そのなかでリモートワークなどデジタルを駆使して業務を継続する例が出てきて、オンライン会議やEコマース、オンライン受発注、オンライン設計・レビューなどが、テスト的にではあるが、広く行われた。中小企業もそれらを体験し、使ってみたら案外できた、思いの外便利だった、意外にコストがかからないなどの感触を得た。

0から1を生み出すのは難しい。しかし1にさえなれば、そこから増やすのは案外簡単。コロナによって日本の製造業とそこで働く人々はデジタル化と自動化の効果を体験し、その効果を実感した。土壌は耕され、種もまかれた。21年は育て、刈り取る年だ。

 

トップダウン? ボトムアップ? 成功のカギを握るミドル層

自動化・デジタル化は誰が主体になって進めるべきか? また、FA各社は誰に提案をするのが良いのか? 投資額が大きく、経営戦略の一環であるから経営トップが先頭に立ってやるべきだ。いやいや実際に業務を行っているのが現場であり、現場主導が適している。トップダウンかボトムアップか、何年もそんな議論が行われてきた。

しかし結論はすでに出ている。旗頭となるべきは、工場長など生産を統括する事業部長クラスだ。工場や生産の現状を一番理解し、責任を持つ立場であり、それより上位の経営戦略にもタッチしている。木を見て森を見ない現場と、森を見て木を見ない経営層の両方を理解できるのは彼らしかいない。

自動化・デジタル化ではITとOTの融合がポイントで、その中間にあり、両者を結びつけるエッジ層が重要だと言われるが、それを役職や人に置き換えればエッジ層=事業部長、工場長だ。経営が分かる現場トップ、自動化・デジタル化のカギは彼らが握っている。

 

自動化で未来を創造する

これからも日本は人口減少が続く。インフラ等の更新や新規ビジネスが出てきたとしても、国内市場の縮小傾向は止められない。

自動化の目的は、労働力不足をロボットや機械で補うことだけではない。日本で培った自動化の技術とそのビジネスを海外に展開し利益を得ることだ。そこで得た外貨は国内に還元され、未来創造の資金となる。

日本は少子高齢化が世界でもトップクラスに進む課題先進国で、それを解決するための企業や人材、インフラが整備されている世界でもまれな国だ。だからこそ世界は日本に注目し、期待し、同時に恐れている。

日本が自動化技術を開発し、使い、世界に広めることは、個人と企業、日本、さらには世界にとってもメリットしかない。


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。