デジタル化の次のビジネスを妄想する

デジタル化の次のビジネスを妄想する

4月にドイツで行われたハノーバーメッセ。先日、日本から参加した人に印象を尋ねたところ、「会場とその雰囲気は別として、展示内容は目新しいものはなく、案外つまらなかった」という感想だった。

私自身も今回は新鮮さに欠けたという印象を抱いており、同じように感じた人がいたことに少しだけホッとした。

とは言え、ハノーバーメッセは世界最大級の産業見本市であり、面白くなかったというのはあり得ない。私もずっと違和感を抱いていたが、ようやく答えに行き着いた。

 

ハノーバーメッセでドイツがインダストリー4.0を全面に打ち出してきたのが2013年ころ。当時、日本でもIoTという言葉が使われはじめたが、今ほど理解度は高くなく、インダストリー4.0やスマートファクトリー、IoTの言葉だけが踊っていた。

しかし数年がたって、世界でIoTへの理解が深まり、社会実装フェーズに入った。実際の現場や工場に何を入れていくかが関心事になり、関連製品やサービスが世にたくさん出ている。日本でも見える化や稼働監視、予知保全など現場で使えるアプリケーションが充実し、ハノーバーメッセも同じような製品や展示品が多かった。

最先端やその先の未来を期待していた自分と、現実路線を紹介する路線が中心となった見本市のギャップ。これが違和感の正体だったようだ。

 

社会実装段階に入ったデジタル化を着実に進めていくことは重要。しかし一方で、社会のその先の未来を想像し、ビジネスのタネを探す、育てることもまた大切だ。

IoTやデジタル化で進んだ未来と言っても地上の話。視野を広げれば空中、地中、海底の世界が広がっている。もっと広げれば宇宙だ。

数年前はデジタルの世界に対して夢を見て妄想した。いまはそれが現実となりつつある。では次はどの世界に対して夢を見て妄想しようか。それがビジネスのはじまりになる。


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。