デジタル庁への期待
新たな内閣のもと、目玉政策になりそうなのが「デジタル庁」の開設だ。年内に基本方針をまとめ、来年の通常国会に提出し、2021年中には発足したい考えのようだ。
行政の縦割りを打破し、社会全体のデジタル化を推進することをミッションとし、具体的には国や自治体のITシステムの統一・標準化、マイナンバーカードの普及、行政手続きのオンライン化、医療や教育のデジタル化などに取り組むとのこと。
賛否両論さまざま噴出しているが、国がデジタル化に本気で取り組む意志を示したことは大きな前進だ。
デジタル庁の創設を受け、思い出すのが5年前の「ロボット新戦略」をめぐる動きだ。当時、ドイツが国策としてインダストリー4.0を打ち上げ、世界的に第4次産業革命のブームが巻き起こっていた。日本もその流れに乗る形で独自の戦略としてロボットに着目し、ロボット革命を実現し、ロボット利活用社会に向けて世界をリードする考えを示した。
そして、その推進主体として、機械産業を中心としてロボット革命イニシアティブ協議会(RRI、現在のロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会)が組織された。
当時、ドイツ以外の各国も、中国の中国製造2025、フランスの産業の未来など、国主導で産業振興策を進めており、日本もそれに対抗して強力に推進していくものと期待した。しかし残念ながらRRIは民間組織であり、国も強いリーダーシップを発揮することはなかった。5年前にもデジタル化の大きなチャンスがあったことが悔やまれる。
コロナ禍とニューノーマルを受けて「日本は変わらなければならない」という意識が社会に広まっている。
また、多くの人がオンライン飲み会やテレワークなどデジタル技術を経験し、それが有益であることを知った。これまでの状況とは大きく異なる。
今回、国はようやく重い腰を上げた。デジタル庁には期待が大きい。聞こえてくるのは行政サービスの効率化だが、効率化と経済成長戦略は車の両輪。ぜひ産業のデジタル化にも力を入れて取り組んでほしい。