ダイバーシティが輝くものづくり ~オムロン京都太陽の取り組み~ 後編
会社概要
オムロン京都太陽株式会社(京都市南区、宮地功代表取締役社長)は、オムロン株式会社と社会福祉法人太陽の家との共同出資会社で、ソケットやセンサといった産業用機械で使われる製品を中心に製造を行っている。
企業と福祉の両面をつなぐ役割を果たすことで、障がい者の雇用就労の機会をつくり、仕事の安定供給 と事業経営の安定を図りながらノウハウを広く社会に提供している。
4500人/年もの見学者が訪れるが、3割程度は海外から訪れる程、世界的にも注目を集めている。
障がい者が活躍する工場
工場では全体で180名以上が働いており、そのうち140名を超える人が何らかの障がいを持っている。完全自動機や健常者と比較してしまうと、どうしても作業効率は落ちてしまいがちだが、作業者各自の力を最大限発揮することで、競争力のある生産性と品質を実現している。
同社の大きな特徴として、作業者の働きにくさを解消するような設備や道具の自社開発が挙げられる。
通常の工場であれば、はじめに業務がありきで、それに対して人や設備が紐づけられるが、オムロン京都太陽では、人に対して業務がつく。その人がどんな障がい特性があり、どんな作業が得意でどんな作業が苦手なのか。苦手な作業があれば、どんな設備や道具があればそれを解決できるのかを、フロアリーダーやラインリーダー、設備技術者や実際の作業者が一体となって考え、具現化していく。3S(整理・整頓・清掃)はその根底にあり、工場では徹底されている。
さらには、別の障がいの場合ならどうしたら良いか、どうしたらもっと簡単に目的が果たせるかなどを考えることで、障がい者専用機というのではなく誰でも便利な工夫が生まれてくる。
例えばセンサやランプを組み合わせ、正しい部品を取るためのガイドをするピッキングシステムなどは知的障害がある人にも作業をしやすくし、誰が作業をしてもミスを少なくすることを実現している。
日々の提案・改善とは別に、年に1回各フロアの製造リーダー、技術メンバー全員でどういう設備をつくるか提案を集め、開発の優先順位をつけている。例えばハンコを押す工程では、車いすの利用者は腹筋が使えないため、手の力だけで市販のスタンパーを使う。回数は1日600回にもなり、手が痛くなってしまうが、「押す」機能をシリンダーによる道具に置き換えて、「のせるだけ」で安定して押せる自動化された機械を実現した。こうした開発は「この人にも作業してもらいたい」という強い想いが欠かせないという。
広がりを見せる取り組み
作業現場はオープンだ。事前申し込みをすれば、個人でも団体でも見学ができる。作業する方は、驚くほどの手さばきで各作業を進めながら、笑顔で挨拶をしてくださる。
通常工場の生産現場は製造ノウハウが詰まっているため、外部に公開はしないが、オープンにしている理由は同社の使命にあるという。「軽度だけではなく、重度の障がいのある方々もオムロンの生産技術と全員の創意工夫で雇用機会をつくっていくこと」「企業としてお客様に満足いただける製品をつくり、収益を確保すること」「ノウハウを広く社会に還元し、障がい者の方々も暮らしやすい社会づくりに貢献すること」。利益や生産性だけでは図ることができない
見学者からはこんな質問があるという「生産性を上げるのならば、もっと自動化を進めたらいいのではないでしょうか?」。利益だけを追い求めるのであればそれも一つの答えかもしれないが、同社の使命は「雇用機会」「収益」「社会貢献」これらをバランスよく並立させることにある。
オムロンから始まった太陽の家との合弁事業は、「ソニー」「ホンダ」「三菱商事」「富士通エフサス」「デンソー」などにも広がりを見せている。製造業をはじめとして、日本企業が今後発展を続けるために、この様な取り組みにもっと注目し、社会全体で支援していく環境づくりが必要だ。
オムロン京都太陽では個人、団体問わず随時見学を受付している。申込みなどはHPにて