ゼネテック 作業時間70%カット実現、オフラインティーチングがもたらすメリット
少量多品種生産にも対応
ロボットのティーチング作業をPC上で行えるオフラインティーチング。作業工数や時間短縮が最大のメリットと思われがちだが、実際はロボットの動作プログラムがいつでも誰でも作れるようになることのメリットの方が大きい。
ユーザーが自ら操作できることで、少量多品種への対応や作業改善が促進され、より生産性の高い現場づくりが実現する。
オフラインティーチングソフト「Robotmaster」を販売するゼネテックに話を聞いた。
時間がかかるティーチング
産業用ロボットが自動で動くようになるためには、ロボットの動き方を決めるプログラムを作成してコントローラに読み込ませる必要がある。その作業はティーチング(教示)と呼ばれ、一般的にはロボット本体と付属のティーチングペンダント(操作用コントローラ)を使って行われる。
ティーチングにはいくつかの難点があり、1つは、ティーチングは小さくて細かな作業が幾重にも積み重なっており、1回で膨大な時間と手間がかかること。2つ目は、現場に据え付けられたロボット本体を使って行うので、ティーチングの間は生産ラインを動かすことができない。3つ目は、ティーチングとロボットの操作は誰でも許されている作業ではなく、専門の操作・安全研修を受けた人でないと行うことはできない。特定の技術者に限られるためコストは高く、スケジュールの自由度も低い。
せっかくロボットを導入してもティーチングがボトルネックになるのはよくあること。そのティーチングの課題を解決するのがオフラインティーチングだ。
CADデータから動作軌道自動生成
オフラインティーチングとは、専用ソフトウエアを使ってコンピュータ上でティーチングを行うこと。専用ソフトウエアは、CADCAMと同じくロボットの動作プログラムの作成を支援する機能があり、ティーチングペンダントで行うよりも作業時間を大幅に短縮できる。
エンジニアソリューション本部営業技術部 佐原宗樹部長は「Robotmasterはロボット用CADCAMという位置づけ。CADで作成したワークの3Dデータから動作軌道を自動作成でき、誰でも簡単に使え、正確で早いのが特長だ。ティーチング時間を平均で70%カットを実現している」という。
海外では一般的 日本でも徐々に
オフラインティーチングは工数削減に効果的で、欧米をはじめ、中国などでは積極的に使われている。しかし日本ではそれほど浸透していない。
その理由について佐原部長は「海外では、ティーチングのベースの部分をオフラインティーチングで行い、最終調整や追い込む部分はティーチングペンダントでやると割り切って使っている。日本はどちらか一方ですべてをやるという意識が強く、完璧を求める。その違いが大きいのではないか」と分析する。
それでも最近は「これまでの自動車や電子機器以外の産業にもロボット導入が広がってきて、オフラインティーチングを見る目も変わってきた。これまで溶接やバリ取り、研磨が多かったが、レーザーカッティングや貼り付け、食品ピッキング、ねじ締めなど用途が広がっている。ロボットシステムインテグレータの数も限られており、これからもっとオフラインティーチングの需要は高まっていくだろう」としている。
柔軟な生産ライン構築支援
オフラインティーチングのメリットについて、これまでは工数削減が目立っていたが、佐原部長によると、本当に威力を発揮するのは、導入後の運用段階に入ってからだという。
多品種少量生産への対応や短期間の単発的な作業補助、多能工化など、さまざまな場面でもっと使いこなしていくとオフラインティーチングは欠かせないものになっていくと見ている。
「これから少量多品種生産が進むと、今後ロボットは短期間で動きや作業を変えることが増えていく。外部業者にティーチングを任せたままになっていると、迅速に対応できない上、時間とコストが膨らんでいく。また、自分で動かしたい、もっと使いたい、試したいという欲求は必ず出てくる。オフラインティーチングソフトを使えば、変化に対して早く安く対応でき、用途を開発できるようになるだろう」
ロボットはプログラムを変更すれば動きが変わる。そこが自動機と大きく異なる部分で、別作業や別工程への転用もできる。ロボットの本当のメリットはその汎用性で、オフラインティーチングはそれを可能にする重要なツールになっていくと強調する。さらにロボットメーカーともっと協力し、ロボット普及をさらに加速させたいとする。
「ロボットメーカーも独自に専用ソフトウエアを持ってはいるが、特殊加工のような当社が得意とする分野に対する機能を拡充し、もっと彼らと協業を進めていきたい。また今はシミュレーションに対する関心が高まっており、当社もFlexSimを販売している。Mastercam、Robotmasterとの相乗効果を生み出すためにも、これらをつなぐような機能開発なども進めていきたい」としている。