シミュレーションを活用する

シミュレーションを活用する

モータースポーツの最高峰のF1。チームは世界中を転戦する忙しい日々を過ごしているが、そのなかでもテストを繰り返し、レースに向けて車の性能を磨き上げている。

しかしチーム運営費が高騰し過ぎたため、実車を使ったテストに制限がかかるようになり、それを補うものとしてシミュレーションの重要性が高まっている。

 

車体開発にシミュレーションが使われるようになってドライバーも一変。昔はチームのドライバーは正規ドライバーとリザーブドライバーのみだったが、最近はシミュレーション担当のドライバーも加わるようになっている。

シミュレーションドライバーの役割は、文字通り車とコースをリアルに再現した空間で運転し、開発用データを取ること。そこで得たデータをエンジニアが分析し、車の性能向上につなげている。ドライバー側もシミュレーションで走り込み、車とコースを体に覚えさせるために活用していたり、若いドライバーがシミュレーションドライバーとなって腕を磨き、正規ドライバーになるためのステップアップとしていたりする。

今や車体開発とドライバー育成のためにシミュレーションは欠かせないものとなっている。

 

翻って製造現場。最近はAIやロボットなどを使って熟練作業を自動化しようと躍起になっているが、人が得意な領域、コストパフォーマンスが良い作業など、自動化だけでは解決できないものも存在する。

また熟練作業をさらに向上させようとしたら、その技能を知っておくことが役に立つ。技能を次の人に教えることは今も昔も重要であり、習熟のためのトレーニングは欠かせない。シミュレーションは、試す、チャレンジすることのハードルを極力まで下げ、能力向上にも効果的だ。

深く、広く技術を理解し、学び、改善につなげるためにも、シミュレーション活用の広がりに期待したい。


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。