サッカー大国とものづくり大国の共通項
ブラジルやアルゼンチンをサッカー大国と言って異論を挟む人はいないだろう。ブラジルはワールドカップを5回制覇している最多優勝国。アルゼンチンも2回優勝している。
サッカーの王様ペレ、神様ジーコ、天才マラドーナ、現在の世界最高の選手の一人であるメッシ、各時代で世界最高のタレントを輩出している。しかし、これだけではない。さらにスゴイ数字がある。
2015年にInternational Centre for Sports Studies(CIES)が他国にサッカー選手を輸出している国を調査したところによると、選手輸出国のトップはブラジルの1784人、2位はアルゼンチンの929人。この2国が突出して多く、ヨーロッパをはじめ世界中で両国の選手が活躍している。
若いうちに優れた選手を育て、海外に送り出す。こうすることで選手は海外に出て高給を手にするようになり、クラブにも莫大な移籍金が入る。移籍で空いた穴は次の若い世代を育てて埋めていく。
こうした好循環が何十年も続き、いつの時代も世界トップクラスのタレントを生み出す土壌ができている。
かつて日本は優れた技術と製品を生み出し、販売でも世界を席巻し、その実績と敬意から「ものづくり大国」と言われた。多くの技術者が世界の現場を飛び回り、カンファレンス登壇や国際会議の委員を務め、優れた人材とその活動も含めて「ものづくり大国」であった。
しかし近年はそうした活動をできる人が少なくなり、世界における日本の存在感の低下につながっている。人口減少を外国人材やロボットなどのテクノロジーでまかなうことはできる。しかしそれでは過去から紡いできた技術と知識という資産を継承することができなくなる。日本の最大の強みを捨てることになる。
大事なのは、過去からの資産を引き継ぎつつ、人不足という眼の前の課題を解決すること。優れた人材を輩出してこその「ものづくり大国」である。