コロナを踏み台にV字回復へ

コロナを踏み台にV字回復へ

一昨年から声高に叫ばれるようになった「働き方改革」。残業の減少や副業許可など一定の成果は出ていたが、ムーブメントとも言える大きな波にはなっていなかった。

しかし不本意ながら新型コロナウイルスがもたらしたこの状況は人の意識に大きな変化を与えた。

リモートワークは「会社でなければ仕事はできない」という固定概念をいとも簡単にひっくり返し、デジタル技術を活用すれば自宅でも十分に仕事はできることを証明した。この流れがこのまま大きな潮流となり、デジタル化がもっと進むことに期待が高まる。

 

コロナ禍で有効性が認められたのは、これだけではない。数年前にブームとなった3Dプリンタもウイルスの感染拡大防止に一役買い、再注目を集めている。

例えば北米トヨタは、米国での感染拡大に対し、自社が保有する3Dプリンタで医療従事者用のフェイスガードの生産に乗り出した。ドイツでもメルセデスが3Dプリンタで人工呼吸器の部品製造を手助けしている。シーメンスも医療機器メーカーや医療従事者、病院の要請に応じて医療用部品の出力や設計の支援を行っている。3Dデータさえあれば形にしてすぐに作ることができるという3Dプリンタの長所を生かし、医療現場が求めるものを素早く作って供給を始めている。これも3Dプリンタというデジタル技術があってこそ。

いま3Dプリンタは設計部門の試作で使われているだけだが、こうして3Dプリンタの利点やメリットがもっと浸透していけば、治具のようなすぐに少量必要なものや、生産終了品や時折注文が入る修理用部品などの対応用に生産現場、保守やサービス部門でも導入が進むかもしれない。そんな期待を抱かせる。

 

ここ数年で世界中でデジタル変革、DX(デジタルトランスフォーメーション)の流れは一気に強まってきた。しかし現実には、それはごく一部の大企業、先進的な取り組みができる人々の間で実証実験やPOC(概念実証)レベルだったのが実態で、中小企業やごく一般的な製造業企業まで浸透しているかどうかとなると疑問が残る。

大きなネックとなっていたのは、現場も経営者も含めた人の意識。しかし今回、コロナウイルスによって強制的に変化を強いられており、自社の働き方について考えが変わるのは間違いない。

コロナ終息後はV字回復は必須。経済状況悪化という逆風はあるが、世界最高のデジタル活用社会を日本から作り出そう!


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。