コストダウンを目指すための改善手法
内閣府の「平成25年度年次経済財政報告」によると、日本企業の収益性は、国際的に比較して驚くほど低いことがわかっています。
日本企業といえば、トヨタ自動車の「ジャスト・イン・タイム」など、世界的にすぐれたコスト削減のための経営手法が知られてきたはずですが、どうしてそのようなことが起こっているのでしょうか。
日本企業の収益性は、アメリカ、ドイツの企業の半分以下
「年次経済財政報告」では、企業の収益性を測る指標の一つであるROA(総資産利益率:株主資本と負債の合計である総資産に対する利益の比率)に着目して比較しています。
日本企業は、アメリカ、ドイツの企業と比較した場合に約半分~3分の1にとどまっています。
とくに、中小企業にその傾向は顕著です。
ROAは、1.売上高に対する利益の割合を示す売上高利益率と、2.売上高を総資産で割って求められる総資産回転率という2つの要素がありますが、日本、アメリカ、ドイツについて比較すると、日本企業の総資産回転率はアメリカ、ドイツと同程度の水準であり、売上高利益率が低いことが収益性が低くなる要因であることがわかります。
ROAが低くなる理由には、さまざまなことが考えられますが、高コスト構造が利益を圧迫している可能性がまず考えられます。
同報告書によると、製造業の売上高に占める売上原価の比率をアメリカ、ドイツと比較した場合、売上に占める原料・部品の費用や労務費、輸送コストなどからなる売上原価の割合が高く、利益を圧迫していることがわかります。
売上原価が高くなる理由として、多階層におよぶ流通システムが、商業・運輸マージンを押し上げて高コスト構造を作り出しているということがあります。
実際、日本企業の製造業の生産額に占める卸売業と運輸業の中間投入比率はアメリカ、ドイツに比べて高い水準です。
工場のコスト改善は、小さなところからも始めてみよう
このように、「平成25年度年次経済財政報告」から、日本企業の収益性が低い理由について、コストの面を見ていきました。
製造業の工場のコスト改善は、小さなところからも始められます。
例えば、電気代の改善を見てみましょう。
インバータ照明は、まだ先進的な大企業を中心に取り入れられている程度ですが、月々の電気代が約50万円の場合、削減額は月々4万円程度といわれています。
それでも、年間にすれば約48万円と、1カ月分の電気代が浮く計算になります。
また、家庭用でも広がりつつあるLED照明も、長寿命化による工賃の低下及び水銀灯と比べて約80%の省エネになります。
熱を持たないので、空調のコストダウンにもつながります。
取り付けに、自治体などから補助金が出る場合もあるので、一度チェックしてみてください。
また、電気代のコスト削減でもっとも効果的なのが、照明を間引くことです。
LED照明の導入と合わせれば、電気代を半減させることができます。
また、従業員の節電意識も高めることができます。
電気代の改善を専門に行うコンサルタントもいるので、気になる場合は相談してみてもよいでしょう。
過剰コストの発生要因となる「ムダ」を削減することで、利益率をアップする
一方で、日々の業務からコストの構造改革をし、利益率をアップさせるためにはどうしたらよいのでしょうか。
その一つとして、過剰コストの発生要因となる「ムダ」を削減するという方法があります。
例えば、「本来は必要ないのに、定例となっているためになんとなく行っている業務」や、「特定の人しか理解していない業務」「責任者がはっきりしていない業務」など、業務の目的があいまいになっているものはありませんか。
こうしたものが、「ムダ」を発生させている可能性は多いにあります。
これでは、いくらコストの引き締めを行っても、従業員のやる気をそぐだけで、利益率が上がるはずはありません。
「ムダ」が発生しているということは、経営資源たるヒト・モノ・カネ・情報が、利益を生み出す源泉である事業ではなく、不必要な部分にかけられているという状態を示しており、ムダをへらせばそれだけ残業がなくなったり、余った時間を他の重要な仕事にまわすことができるようになります。
企業活動には必ずコストが伴います。
その一方で、「ムダ」業務のような不必要なコストも発生しています。
コスト削減をはじめると、ついつい目につく目立ったものから削減してしまいがちですが、まずは、各人の業務内容を洗い出して、必要なコストと不必要なコストを洗い出すべきです。
利益の源泉たるコア事業へのコストを削減するのではなく、まずは不必要な業務にかかっているコストを削減するところから始めるべきでしょう。
そのためには、個々の事業を属人的な「聖域」にしてしまうのではなく、担当者以外の従業員や管理者が客観的に業務内容を把握し、問題点があれば指摘できる環境を整えることが大切です。
出典:『日本の製造業革新トピックス』株式会社富士通マーケティング