クラウドファンディング、WEB受託加工・生産、開発・設計新手法で効率化

クラウドファンディング、WEB受託加工・生産、開発・設計新手法で効率化

顧客の要求や市況、現場の状態に合わせて柔軟に対応できるように工場、製造工程を高度化することをスマートファクトリーとするならば、その前段階である開発・設計も柔軟に対応できる仕組みが求められる。

そこで再び注目を集めているのがメイカーズムーブメントから生まれたクラウドファンディングやクラウドソーシング、WEB受託加工・生産サービスなどの新たな仕組み。手軽さとスピード感を生み出し、メーカーの開発部門等で有効活用が進んでいる。

手軽さ、スピード感 メーカーでも有効活用

富士経済がまとめた「NEXT FACTORY関連市場の実態と将来展望2018」では、ものづくり関連のクラウドファンディングやクラウドソーシング、WEB受託加工・生産サービスなどを、テストマーケティングや製品開発に向けたデータ収集や小ロット生産など本格的な生産開始前の場として捉え、新たなものづくり手法として市場予測を行った。

調査によると、18年の世界におけるこれら3市場の合計は6200億円だが、25年には4兆30億円まで急拡大すると予測。従来の枠にとらわれず、迅速にヒト・カネ・モノを集める手段として拡大している。

プロジェクトの支援者や財源を集めるためのクラウドファンディングは大幅な市場成長が続き、テストマーケティングや先行予約販売の場として多くの企業による活用が進んでいる。業務委託を募るクラウドソーシングは個人事業主が多い北米を中心に欧州や中国、インドなどの海外市場が堅調に拡大。WEB受託加工・生産は小ロット生産ニーズの高まり、金属3Dプリンターによる製造の増加などにより伸長し、少量多品種生産が要求される業種での小ロット生産需要は今後も高まっていくと予測している。

外注サービス活用

 

実際にサービスを提供している企業も急成長を遂げている。

樹脂・金属部品の射出成形・切削加工サービスを展開している米・プロトラブズの18年のグローバル売上高は前年比29.3%増の4億4560万ドル。WEBに3Dデータをアップロードするだけで見積りと注文ができ、短納期で製品が届くという手軽さとスピード感が受け、サービス開始から20年でここまで事業を拡大した。利用者数も増加傾向で、同社のサービスを利用した製品開発者は18年だけで4万6000人(22.5%増)に上った。日本でもすでに2700社での実績があるという。

国内でも同様の例がある。プリント基板の設計から製造、実装、量産までをWEB上でワンストップ提供するP板.comの17年度売上高は19億9500万円(9%増)。営業利益2億8600万円(24.4%増)、純利益2億2100万円(39.1%増)と業績は好調。海外の廉価サービスとの競争が激化するなか健闘しており、今期も売上高21億円で増加を確保する見込み。利用者も大手メーカーから学校や研究機関、個人まで2万社の実績があり、第3四半期末時点の会員登録者は5万1779人まで拡大している。

国内における受託加工・生産サービスは、これまで各地の有力企業や工場から依頼を受けてきた地場の中小企業が多く、商圏と規模が限られていた。しかし近年は自社のWEBでサービスを行うケースも増加している。また新しいビジネスモデルとして、WEBサービス事業者が協力工場を束ねて受託・加工サービスを提供する例も出てきている。いずれにしても開発者にとっては依頼できる選択肢が増加しているのは間違いない。

参考:富士経済「NEXT FACTORY関連市場の実態と将来展望 2018」


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。