オリックス・レンテック 小林新規事業開発部長に聞く、ロボレンタル事業 第1フェーズ成功
オリックス・レンテック
事業開発本部 新規事業開発部長
ロボット/3Dプリンタ/ドローン事業担当 小林 剛輝氏
環境が整ってきたとはいえ、ロボットの導入にはいまも高いハードルが存在する。製造業向け機器レンタルサービス大手のオリックス・レンテックは、2016年4月にロボットレンタルサービス「RoboRen」(ロボレン)を開始。それまでにレンタルするという概念自体がなかったロボット業界に新風を巻き起こした。
その3年半の実績と今後の展開について話を聞いた。
—— 開始から今までの手応えは?
おためしレンタルは3年半あまりで毎年1.5倍ペースで伸び、非常に好調に来ている。2019年12月末までに引き合いが約1800件あり、うち800件弱が実際にレンタルサービスを使ってもらった。レンタル延長や期限満了後に購入したお客さまも多くいる。
45年のレンタル事業を通じて、当社にはすでに3万社の大手のものづくり企業を始めとしたお客さまと付き合いがある。当初はロボットを理解している人、社内に生産技術部門があり、道具を渡せば試行錯誤してでも使いはじめられる人々に使ってもらった。「これでは使えない」「ダメだから返す」という声はほとんどなく、一定の評価をしてもらえた。
特に協働ロボットは産業用ロボットとはまったく異なる製品で、アプリケーションやインテグレーションに対するノウハウを持った人はまだ少ない。今は多くの企業がPoCを行い、自社における協働ロボットの使い方を探している段階だ。
—— 協働ロボットは中小企業と三品産業、特に食品業界で期待が大きい
三品産業や中小企業からの問い合わせは多く、たくさんの人にラボを見学してもらった。関心はとても高く、手応えもあるが、情報収集で終わっている印象だ。
食品業界や中小企業は資金力が潤沢なわけではない。人手不足が進んでパートタイマーがいなくなってもパートタイムの業務は残る。協働ロボットは人がいなくなる前の、危機的状況を回避するための投資と考えてもらわないと難しいだろう。
—— iREX(国際ロボット展)ではアプリケーションの訴求が多く、ロボット市場も次の段階に来ている
以前のiREXは、協働ロボットがどれくらいのスピードで動くのか、どの程度で止まるのかなど、実物を見ることができるのが価値だった。それが今回は、多くの企業がユーザーにとって有益な使い方、アプリケーション化したソリューションを提案していた。
いま協働ロボット市場は、どの工程でどのように使うかというアプリケーションに向かっている。レンタルサービスを使った800件のお客さまも、目的は現場での使い道を探るPoCが多い。当社もそれに向けた取り組みを強化している。
—— ラボについて
17年1月に東京技術センター内(東京都町田市)にTokyo Robot Lab.、9月にTokyo Robot Lab.2をオープンした。開所当時はマルチベンダーが珍しく、複数メーカーの実機が見られるショウルームとしてとても評判が良かった。いまはアプリケーション展示や、実証実験ができるラボ機能など、実用途に即したヒントが得られる場所へと少しずつ改装しているところだ。
NECと協業アプリケーション強化でサービス充実
—— システムインテグレーションでNECとの協業を発表した。その意図は?
NECは創業のころから付き合いが深く、通信網の整備や、携帯電話や通信機器の開発製造に対し測定器のレンタルを通じて、彼らのものづくりを支援してきた。そのNECが、ものづくり企業のスマートファクトリー実現のサポートを目指し、自社工場で培ったICTやIoT、現場ノウハウを外販し、ロボットについても「ロボット導入トータルサポートパッケージ」の販売を始めている。今回の協業ではロボットレンタルの仕組みでNECの事業促進をサポートし、当社のRoboRenのサービスメニューににロボット導入トータルサポートパッケージが加わることで、NECが提供するサービスと合わせてロボットをレンタルできるようになる。
ロボット導入トータルパッケージは、NECが実際の現場作業を標準化してシステムに落とし込み、ロボットアプリケーションとしたものだ。ユーザーはロボット単体を見るよりも、標準化された作業アプリケーションを見た方が自社に導入した時のイメージが湧きやすく訴求力も高い。今はねじ締め工程のみだが、NECは他にもたくさんのアプリケーションとノウハウを持っており、その拡大に期待している。また当社の発案でNECが標準化してパッケージを開発するといったコラボレーションも視野に入れている。
ロボット単体のレンタルは好調でも、それだけでは事業は拡大しない。当社には製造業の顧客基盤とレンタルの仕組みがある。NECには実際の製造現場があり、匠と言われる専門家がいてコンサルができ、知見をたくさん持っている。ユーザーの抱えている悩みに対し、NECのコンサルと合わせて、アプリケーションパッケージに昇華した形でのサービス提供など、お互いの強みを生かして役割分担をしながら進めていきたい。
物流施設の自動化支援にも力
—— 取り扱い製品の拡充について
いま産業用ロボット、AGV・AMR(モバイルロボット)、コミュニケーションロボットも含めて20メーカー42機種をカタログ品として取り扱っている。主に製造業の工場向けでだが、最近は物流施設向けの問い合わせも増えている。
扱っているAGV・AMRは倉庫内物流用機種で、今年の2月には、新たにHIKROBOT社の自動搬送ロボット「Latent Mobile Robot」で、可搬重量が600キログラムと1000キログラムの2モデルを追加すると共に、物流ロボットSIerのオフィスエフエイ・コム(栃木県小山市)との業務提携を行うなど、物流施設の自動化支援にも力を入れている。特にモバイルロボット×垂直多関節ロボットのニーズは高く、これが実現できればもっと普及が加速するだろう。
—— 今後について
あらゆるテクノロジーは、ガートナーが提唱するハイプサイクル(期待・幻滅・停滞・普及)に当てはまると言われる。はじめ期待が先行し、ピークに達した後、急激に下がり、そこから復活して徐々に普及するというものだ。協働ロボットはまだ期待が大きく、幻滅失望期には入っていない。期待が高いうちに具体的なアプリケーションが増えて次の波ができれば、ガクッと下がることなく普及が進んでいくだろう。
商材としての協働ロボットの第1フェーズは成功した。今後はニーズに合わせたアプリケーション提案の強化が鍵となる。お客さまのユースケースの拡大にどう貢献できるかが課題だ。