インフィニオンテクノロジーズジャパン グローバルな開発・生産で顧客と密...

インフィニオンテクノロジーズジャパン グローバルな開発・生産で顧客と密着

需要拡大のパワー半導体で世界トップ

電力の制御や変換などをつかさどり、世界的に需要が拡大するパワー半導体。パワー半導体の世界トップシェアのインフィニオンテクノロジーズは、フルラインアップの製品力、世界に広がる製造・サービス拠点に加え、SiCなど顧客と一緒に新技術のアプリケーション開発をしたり、プログラムレスですぐに使い始められるモータドライバICを開発するなど、顧客に寄り添った課題解決型のビジネスで世界中にファンが多い。特に日本は最先端のニーズが学べるユーザーが多数存在する特別な市場として高く評価し、ビジネスを強化している。同社の取り組みについて、インダストリアルパワーコントロール事業本部 針田靖久本部長に聞いた。

インフィニオン針田様

—— インダストリアルパワーコントロール(IPC)事業本部について教えてください。

IPC事業本部は4つある事業の一つで、売上高は約1300億円。グループの17%を占める。

発電から送電、最後に電気の消費まで一気通貫でサポートしている。発電、送電向けはソーラーや風力などの再生エネルギー、消費向けでは鉄道やエレベーター、エアコン、FAのロボット、サーボモータなどがメインのアプリケーションだ。

製品は、IGBT、SiCのチップ、ディスクリート、モジュール、バイポーラ、IPM、ドライバICなど、フルラインアップで持っている。最近はロボットサーボ向けのインダストリーIPMのラインアップも拡充している。白物家電向けがメインだったが、FA、ロボティクスにも広がっている。

毎年売り上げの13%前後の約1000億円を研究開発や製造設備に投資を行っている。

—— 製造や営業拠点が世界に広がっています。

世界に研究開発拠点が34カ所、製造拠点が19カ所ある。パワー半導体関連では本社があるドイツのドレスデン、オーストリアのフィラッハ、マレーシアのクリムに前工程の工場がある。

ドレスデン工場では、業界で唯一、300ミリウェハでパワー半導体の生産を行っている。200ミリウェハに比べ1枚当たり2倍以上のチップが取れ、コスト競争力、数量で優位性となっている。また300ミリでは薄型化による熱性能の向上とエネルギー効率の改善を進めている。300ミリの比率は年々上がり、2022年には生産の半分程度までなる見込みだ。

当社のお客様のほとんどが海外でビジネスを展開している。設計は日本でも、製造は海外で行っているお客様が多いことから、グローバルサポートやBCPの面で、当社のグローバルな拠点展開は高く評価されている。

日本は最先端ニーズが学べる市場

—— 日本の位置付けは?

当社では、最先端のアプリケーションを提供しているお客様を先生に見立て「ティーチングカスタマー」と呼んでいる。日本のお客様は最先端のいろいろなアプリケーションを開発している。半導体開発の水先案内人的な存在として重要だと考えている。そのため日本は重要なリージョンになっている。

—— 新しい半導体技術としてSiCへの期待が高まっています。

1992年から取り組み、25年になる。直近では、1200V SiCダイオードMOSFETの量産化を開始し、新年度の注力製品の一つとなる。

SiCは、ユーザーの技術評価も始まり、期待が高まってきている。しかし新しいデバイスのため、絶縁構造や高周波特性など使い回しへの信頼性が必要だ。そこで当社では従来と同じゲートドライバで使えるようにし、利用のハードルを下げている。またソフト面でのサポートも重要だ。日本では当社と販売代理店が一緒になり、チームとしてコンサルティングのようにSiCの利用を支援している。

—— サーボモータなどモーション系のビジネスはいかがですか?

自動車で内燃機関からモータへと起きたような大きな変化がインダストリアルの方にも広がり、モータビジネスは拡大していくとみている。例えば、世界は日本に比べてインバータ率が非常に低い。モータの需要拡大に合わせてインバータ制御のニーズは確実に伸びていくだろう。

そのための製品として、あらかじめモータ制御ソフトウエアを組み込んだモータコントローラ「iMOTION」を提供している。回転制御の基本的プログラムが組み込んであり、モータに接続すればすぐに使える。これによりモータの制御プログラムを作る時間がいらず、その分を製品やサービスなどに注ぎ、開発期間が短縮できる。

ドライバICだけ欲しい企業、制御プログラムまで入ったものが必要な企業、設定まで済んだものを望む企業など、お客様が望むものはさまざまだ。ビジネスモデルに応じて、どんな形態や段階でも製品を供給できるのも当社の強みだ。

—— インダストリー系ではカスタム要求も多いのでは?

一定程度はカスタムがあるだろうという想定のもと、カスタム対応のための体制も確立している。要求があればそのプロセスに乗せて、比較的早いタイミングで開発しサンプルを出せる。

インダストリー系はお客様との密な関係が大切。一緒に考えることでいろいろな意見がもらえ、それが次の製品・サービスのアイデアとなる。また開発の肝となるノウハウ部分は信頼関係がないと、大事なところを共有してもらえない。サポートをしっかりし、信頼を得ていくことが重要だ。

当社は単にチップを売るだけでなく、お客様に価値を提供している。グローバルな開発、製造体制を後ろ盾に、きめ細かく日本のお客様に貢献したい。

参考:インフィニオンテクノロジーズ


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。