つながる体験をどう活かす

つながる体験をどう活かす

自粛期間の終わりも見えてきて、アフターコロナの私たちの生活、ビジネスはどうなる?といった話題が出てきている。

世界中で大きな被害と影響を及ぼしたとは言え、天地がひっくり返ったわけでもない。製造業、特にFA領域では、これまでじっくりと進んでいたデジタル化の波がコロナ禍によって大きくなり、世間の関心度も高まって加速していくものだと予想しているが、それ以上の何かが起こるのだろうか?

 

細かな部分を見ると確かに変化を強いられる分野はたくさんありそうだ。例えば展示会。国内では東京オリンピック・パラリンピックの延期にともなって来年秋ごろまで東京ビッグサイトが使えなくなった。新製品お披露目の場がなくなり、製品開発や販促、営業のスケジュールが狂ったという声も聞こえてくる。

また事務や営業業務でリモートワークが行われ、一部の製造部門でも業務見直しが行われた。再開後、元に戻すのか、変えたものをベースにアップデートするのかによって変化の度合いは異なるが、業務のやり方が変わることは間違いない。

最も大きな変化は「人の心理」だ。これまで大小の波はありつつも、会社や工場に通勤して働いていたことは変わらなかった。しかし今回、行動様式が変わったことがどれだけ人の心理、考え方に影響を及ぼしたかは計り知れない。アフターコロナを考えるにあたり、そこを無視するわけにはいかない。

 

先行き不透明とは言え、ひとつ分かったことがある。「つながる」の万能さだ。自粛期間中にリモート飲み会が流行したが、つながる技術で人と人がつながり、会話を通じて心理的なつながりを作り出した。リモートワークもベースはつながる技術であり、WEB会議や機器の遠隔監視なども実現できた。数年前からIoTがトレンドになり、同時に「つながる」という単語のブームが続いている。

しかしその利便性や有効性について社会が認め、皆が当たり前に使う状態になっているかと言えばそうではない。まだ一部の人や産業に限られていたのが実態だ。だがこのコロナ禍によって、図らずも多くの人が「つながる」技術を試し、その効果を身をもって体験した。

否定的な声は少なく、比較的好意的に受け入れられているようだ。いわばデジタル化に対してお客となる人々は温まった状態にある。状況としては厳しいのは承知の上だが、自動化やデジタル化、FA産業にとっては刈り取るチャンスが大いにある。


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。