これから求められるのは「オープンなIoT」である

これから求められるのは「オープンなIoT」である

貴社には外部の力や知恵を取り入れる仕組みがありますか?

1.これから求められるのは「オープンなIoT」

製造業で注目されているIoT(もののインターネット)。

代表的なプロジェクトや考え方には、

ドイツ中心のインダストリー4.0

アメリカ中心のインダストリアルインターネット

があります。

 

ですから、IoTに関連した技術は欧米が先行していると考えがちです。

しかし、IoTの技術そのものは日本が先行しているとの指摘もあります。

東京大学教授の坂村健氏は次のように説明しています。

坂村氏はオープン組み込みシステム開発環境「TRON」を確立させた方です。

第4の産業革命は、

部品製造から組み立て販売まですべての現場が連結され透明化される。

 

その結果、

意思決定が最適化され、

高効率かつ柔軟な多品種少量生産が可能になるという。

(中略)

しかし、一歩引いて見てみよう。

ここで言われていることは、

トヨタ自動車が「カンバン・システム」で実現したことと大差はない。

 

米国のインダストリアル・インターネット・コンソーシアムが目指すものも目新しくない。

 

産業機器に多くのセンサーを組み込み、

ネットワーク化してデータを集め、

故障診断から

さらには予防修理まで

つなげようというコンセプトは、

コマツの重機の世界ネットワークや、

IHIの発電用ガスタービンの予防保全で既に実現されているものだ。

(出典:日本経済新聞2015年7月9日)

坂村教授は、米独の構想に、技術的な目新しさはないと説明されています。

実は日本の方がIoTの技術では先行している。

 

一方で、坂村教授は、

現行の日本のIoTもこのままでは、安泰というわけでないとも主張しています。

では、日本はIoTで先行しているので安心と考えていいのだろうか。

 

むしろ、先行していたのに

後れを取り始めていることこそ、

日本の産業界の本質的問題が表れていると思ったほうがいい。

 

それをどうにかしないと、

これからのIoTの時代になって、

お家芸である家電や自動車も取って代わられるだろう。

 

トヨタのカンバン・システムもIoTだが、系列に閉じたIoTだ。

 

逆にインダストリー4.0が目指すのは、

標準化したカンバンによりドイツ、

さらには世界中の製造業すべてが

つながれるという系列に閉じないカンバン・システムを目指している。

 

インダスリアル・

インターネット・コンソーシアムも、

(中略)欧米の大企業が組んで実用化を目指す普及期間である。

 

自社製品に閉じたシステムでなく、

広くオープンに予防保全や運転効率化の枠組みを確立しようとしているところに意義がある。

(出典:日本経済新聞2015年7月9日)

従来の日本のIoTは「閉じたIoT」でした。

これから求められるのは「オープンなIoT」であると坂村教授は説明しています。

 

2.外部とつながり異質な価値観を生かす仕組みづくり

貴社で、従来の仕事のやり方を変え、さらなる進化を目指すなら外部とつながることは不可欠です。

外部とつながり、従来にはなかった新たなことに触れられます。

 

新たな価値観、新たな発想、新たな事実、新たなデータ等々。

従来にはないモノに触れて、現状を打破します。

 

自社の経営資源と外部の異質な資源や情報と掛け合わせて「化学反応」を引き起こすのです。

2倍、3倍という掛け算レベルの成果は「化学反応」で獲得できます。

 

一方、自社で有する経営資源の範囲内での効果は、足し算レベルに留まります。

過去の成功体験や固定化した組織文化等の影響で効果は限定的です。

オープンなIoT

私は複数の中小製造業へ転職する機会があり、そこで多くの上司に指示を受けました。

指示をする上司には、対照的な2つのタイプがありました。

 

・外部からやってきた部下に会社のやり方を細かく説明するタイプ

・外部からやってきた部下のスキルを活用しようとするタイプ

 

前者では、自社の経営資源に化学反応をおこす機会を失います。

異質なことが生かそうとする土壌がないからです。

 

無確実性の高い昨今、変化への対応力が求められます。

異質な文化や価値観を、貴社の現場へ生かすことも大切になってくるでしょう。

いろいろな意味で外との「つながり」が重要となってきます。

 

IoTのキーワードは「つながる」です。

多様な情報をリアルタイムに共有することが「つながる」狙いのひとつです。

情報を得ることで、情報を知ることで、次の一歩を踏み出したくなります。

 

IoTでは、自社に留まらず、外部とのネットワークを志向します。

ただし、現場では、いきなり「社外」とつながる水準を狙う必要はありません。

 

「社内」でもつながるべき対象があるからです。

まずは「社内」において「つながる」意識を波及させます。

 

「つながる」水準を、段階を追って高めます。

・各工程内部でつながる

・前後工程間でつながる

・製造ライン全体でつながる

・工場全体でつながる

・工場間でつながる。

・工場と営業でつながる。

・全社がつながる。

・全社と顧客がつながる。

・・・・・・・・・・・・

このようなイメージで外部の情報に触れる機会を拡大させていくのです。

 

そして、外部から得られた情報を生かす仕組みを考えます。

外部の異質な価値観を、内部に上手く取り込んで、現場で化学反応を引き起こすのです。

化学反応は、足し算ではなく、掛け算のイメージです。

 

これからの中小製造現場は、外部変化へ柔軟に対応することが求められます。

自前の経営資源だけで乗り切ろうとするにも限界があるでしょう。

 

だから、外部とつながることを考えるのです。

社内でもつながる余地があることに注目して下さい。

 

多様な価値観、異質な価値観をうまく取り込み、現場で化学反応を引き起こす仕組みをつくりませんか?

 

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出典:株式会社 工場経営研究所 伊藤哉技術士事務所


製造業専門の工場経営コンサルタント。金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。 大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。 その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。 技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)