【トップインタビュー】サンワテクノス田中社長、2025年度売上高250...

【トップインタビュー】サンワテクノス田中社長、2025年度売上高2500億円に向けて

グローバル市場の開拓・新ビジネス創出に挑戦

日本製造業のビジネス環境の変化、第4次産業革命などによって商社・代理店のビジネスも変化している。2019年4月からスタートの第10次中期経営計画「NEXT1800」で、より挑戦的な取り組みを続けるサンワテクノスの田中裕之社長に話を聞いた。

サンワテクノス 田中裕之代表取締役社長

サンワテクノス 田中裕之代表取締役社長

 

–米中貿易摩擦が激しくなり、市場を取り巻く環境が厳しくなる中で、19年度は中期経営計画の初年度ですが

2025年に売上高2500億円を目指す「サンワビジョン2025」実現に向け、19年度から3カ年の第10次中期経営計画「NEXT1800」をスタートした。もともとの本業である「代理店事業」に加え、前中期経営計画で事業基盤を整備してきた「エンジニアリング事業」と「グローバルSCMソリューション事業」の3本柱をコアビジネスとして進めていく。

 

–グローバルSCMソリューションの狙いとするところは

ものづくり企業にとってサプライチェーン最適化は重要な業務だ。しかし、特に海外に生産拠点を持っている企業においては、コストや供給リードタイム、品質の管理・維持など海外生産を進める上での課題が多く、グローバルサプライチェーンの最適化は難しく、悩ましいという声をよく聞く。

グローバルSCMソリューションはそういった声に応えようと、お客さまが個別にサプライヤーと行っていた調達業務を当社が集約し代行することで、お客さまの調達コストの削減と業務効率化を実現する。具体的には、当社の国内の営業拠点、香港物流センターを中心とした世界13カ国27カ所に広がる現地法人のネットワークを駆使し、調達代行やIPO(International Procurement Office)として新たな調達先の開拓、さらにはEMSサービス等を提供する。

今年4月に専門部署「グローバルSCMソリューション部」を立ち上げた。まだ発足して4カ月程度だが、引合金額は20億円を超えた。将来的には、中国からASEANやメキシコなど他の地域への生産拠点の移管または新規追加の案件を目指しているが、これはまだ時間がかかるだろう。

 

–グローバル市場への取り組みは早くから積極的ですが

NEXT1800では、グローバル事業のさらなる拡大も重要なチャレンジと位置づけている。

これまで当社は日本で提供してきたサービスを海外に展開し、日本企業の海外進出、生産拠点の移管を支えることをグローバル事業の成長モデルとしてきた。しかし状況が大きく変わり、いまは現地のローカル企業を攻略していくステージに来ている。

例えば中国市場では現在約300億円の売り上げがあるが、そのほとんどが日系企業中心で現地のローカル企業に入り込めていない。欧米市場でも同じだ。当社はまだ、本当の意味でのグローバル企業になっていない。今はその仕組みづくりに取り組んでいる。例えば、現地法人のローカルマネージャーの育成はその1つだ。現在海外には連結で約1030人の社員がいるが、現地採用社員は約3分の1の360人で、現地では日本人マネージャーのもと、ローカル社員がいる形になっている。

しかし本来はローカル社員が現地をマネジメントし、日本人がそれを支える形が望ましい。日本人社員は当社の文化ややり方を深く理解し、日系企業との関係強化に適しているが、ローカル社員は現地の企業に入り込み、ネットワークづくりが得意だ。それがうまくできているのが台湾で、社員38人のうち、日本人はマネージャーの1人だけ。台湾の社員が現地を盛り上げ、ローカル企業開拓も進んでいる。今後はローカル社員の教育研修を強め、マネージャー登用を進める。日本人と現地社員がお互い協力することで強い組織が作れると考えている。

 

–もう一つの柱として注力しているエンジニアリング事業の進捗は

エンジニアリング事業では、当社が扱う電機・電子・機械のコンポーネンツを単品販売するのではなく、お客さまの要望に合わせて当社で装置を組み上げて提供している。

日本の電機メーカーはものづくりからサービスにビジネスの軸足を移し、必要な要素を集めてきてシステムとして構築して提供するシステムインテグレータのような形態になっている。しかしサービスの要素には必ずハードウエアが含まれる。そこを当社がカバーしているが評価は上々だ。

例えば、ある電機メーカーが中心となってIT技術を活用した公共サービスを提供しているが、そこで使われている装置や端末は、当社がコンポーネントとして納入したものだ。数百台から千台程度の小ロットでの専用装置や端末が必要となる用途は多くあり、国内市場に対する新たな取り組みとして期待している。

 

–人手不足の中で、解消の切札としてロボットへの期待が高まっています

システムインテグレーション事業として10年以上前からロボット販売に取り組んできており、現場で使いやすいロボットシステムを構築して提供するなど、社内にロボットシステムのメリット・デメリット、ノウハウが蓄積されている。

実機体験では、安川電機の国内3カ所にあるロボットセンターや安川ソリューションファクトリ、当社の中国・上海のメカトロセンターにご案内している。最近は多くの企業で、経営トップから現場に対してロボット化を進めなさいという指示が出ており、ブレイクする時期も近く、期待は大きい。

 

–商社本来の業務である代理店事業についてはどう取り組みますか

ものづくり企業は現場のタクトタイムを減らして利益につなげている。当社もサプライチェーンを担う役割からそこに貢献しなければならない。

その一環として、19年1月から名古屋サービスセンターで「新物流システム」を稼働させている。現在の物流の動きを細かく見ると、お客さまの発注元、当社の営業部門、業務部門、物流部門、仕入先などがあり、これまではそれぞれの部門が個々に改善しながら取り組んできている。しかし、発注形態を合理化して見える化すれば、まだコストダウンができる要素が残っている。「新物流システム」はそこにメスを入れて、昨年度構築した社内ITインフラ「SIS2018」も活用していくことでコストダウンできれば仕入先、販売先の双方の利益増につながってくるものと期待している。

さらに、昨今はものづくりを止めて、インテグレータに活路を見いだすメーカーも出始める中で、求められるコンポーネンツを探し集めてくる、なければ作る、あるいは作らせるといった役割もこれからの商社の業務のひとつになってきている。当社は商社・代理店として流通のプロフェッショナルだ。地味な取り組みだが、代理店事業は当社のビジネスの土台であり、これからも強化していかないといけない。

 

◆サンワテクノス


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。