【トップインタビュー】イグス 北川社長、素材から製品まで一貫した開発・...

【トップインタビュー】イグス 北川社長、素材から製品まで一貫した開発・製造に強み

産業向け樹脂製品の世界トップメーカー

プラスチックはどんな形にも加工しやすく、軽くて利便性が高い。それ故に強度や信頼性は低く、金属とは別モノとして認識されがち。しかしエンプラ・スーパーエンプラは、いまや金属と遜色ないレベルまで性能が上がり、自動車や産業用途で広く採用され、今後も拡大傾向にある。

樹脂ベアリングなど産業向け樹脂製品のトップメーカー・イグスの北川邦彦社長に話を聞いた。

北川邦彦社長

北川邦彦社長

 

素材開発から製品まで、産業に特化した樹脂総合メーカー

—— 御社について教えて下さい

当社は1964年にドイツ・ケルンで設立され、世界72カ国にサービス網を展開しているグローバルな樹脂製品メーカーだ。エンジニアリングプラスチック(エンプラ)の素材開発と射出成形技術をベースに独自の製品を製造・販売している。売上高は非公開だが、グローバルでは22年度に10億ユーロ(約1800億円)を目指している。

日本法人は1990年に設立。日本市場の売上はドイツ、アメリカ、中国に次いで世界で4番目に大きく、これまで順調に拡大してきた。今年度も前期比20~30%増やす目標で進んでいる。

 

—— ケーブル保護管のイメージが強い

当社の主力製品は、樹脂ベアリングと可動ケーブル「チェーンフレックス」、ケーブル保護管「エナジーチェーン」の3つ。グローバルでは、樹脂ベアリングの売上が最も大きく、可動ケーブルとケーブル保護管の売上を合わせてようやく樹脂ベアリングの売上と肩を並べられるほどだ。3Dプリンタユーザー向けにフィラメント販売も行っており、欧州をはじめグローバルでは樹脂素材・製品の総合メーカーとして認識されている。

一方の日本市場ではケーブル保護管の売上が最も多い。昔は工作機械や加工機向けにケーブル保護管を紹介することが多く、それが先に浸透した。樹脂ベアリングはグローバルと大きな差があり、日本でも力を入れている。

 

樹脂製品IoTサービス「スマートプラスチック」

—— 御社の特長・強みについて

当社は創業からずっと樹脂にこだわり、材料開発と射出成形技術、そこから生み出される製品によって、お客様の機械装置の寿命を伸ばすという活動を行ってきた。加えて、材料から製品まで徹底した検証・評価テストを通じて、実際の実験データを長年蓄積してきている。

そのため、もともと製品の信頼性と長寿命化は評価が高く、日本でも可動ケーブルとケーブル保護管で二桁成長が続いているのはそのためだ。

また近年、インダストリー4.0やIoTがトレンドとなるなか、素材から製品まで一貫して開発・製造し、樹脂のノウハウを持っている強みを活かして、樹脂製品のIoTサービス「スマートプラスチック」を提供している。

 

—— スマートプラスチックとは?

スマートプラスチックは、リニアガイド、可動ケーブル、ケーブル保護管をスマート化し、それらの状態把握と故障予測、メンテナンス時期を提供するIoTサービスだ。

各製品に外付けできるセンサとデータ処理・無線通信モジュール「icom」で構成され、各製品から摩耗状態やプッシュプル力、破損警告、導電性能のデータをリアルタイムで集めて寿命や異常を測定・計算し、設定したしきい値を超えると管理者に通知される仕組み。当社の場合、寿命予測は計算式ではなく、長年積み上げた24時間365日の実験データに基づいたもので正確な予測となっている。

また当社のクラウドにもつながり、異常検知の際には外部のメンテナンス部隊や交換部品の自動手配ができる機能等もオプションで追加できるようになっている。

異常の早期発見や予期しない稼働停止の回避、メンテナンスの手間とコストの削減に効果的で、オーストリアの自動車工場ですでに使われている。国内でも機械メーカーでの採用が決まり、今秋以降に実際の生産ラインで稼働を開始する予定だ。

 

金属同等の強度と信頼性 重さは1/7、注油不要

—— 樹脂ベアリングの国内市場について

樹脂ベアリングは、その名の通りエンプラやスーパーエンプラといった樹脂素材でできたベアリングだ。金属製と同等の強度と信頼性、すべり性能を持ち、それでいて重さは金属の7分の1しかない。自己潤滑性によって金属ベアリングのような注油のメンテナンスも不要だ。

ヨーロッパ車には1台あたり平均で40個の樹脂ベアリングが使われている。アメリカでは産業用の機械や什器等でも多く使われており、グローバルではその利便性は広く認知されている。新しいものを積極的に使う。

一方、日本には金属ベアリングの世界トップメーカーがあり、昔から「ベアリング=金属製」のイメージが強い。金属製と樹脂製のそれぞれに利点があり、使い分けることでもっと工程を効率化できる。日本ではそうした認知がまだ広がっていないのが実態だ。

 

それでも日本での樹脂ベアリングの売上は、7年前に比べて10倍以上まで増えた。徐々に浸透してきている。

例えば、医療機器や食品機械業界は採用に積極的だ。樹脂ベアリングに代えることによって水や酸、アルカリ等で洗えるようになり、工業用油を使わないところなど、衛生面で高く評価されている。工作機械でも、注油作業がいらず、切子の噛み込みがない。屋外で使う機械についても、砂によってベアリングが軋んで動きが悪くなるという難点があったが、樹脂ベアリングはそれがない。自動車や飛行機等でも軽量化に向けて採用が広がっている。

また国内では、学生向けのロボットやフォーミュラーカーの活動に協賛し、若いうちから樹脂ベアリングに馴染んでもらう啓蒙活動を進めている。彼らが社会人になった後、問い合わせてくるケースも出てきている。よいサイクルが作れており、今後が楽しみだ。

 

3Dプリンタ向け エンプラフィラメント販売

—— 今後について

当社はエンプラ・スーパーエンプラの樹脂材料の開発・製造、販売する素材メーカーの一面もあり、3Dプリンタ向けのフィラメント販売も行っている。

エンプラは材料としては高価で、かつては製品をギリギリまで追い込んだ後でなければ試すことすらできなかった。しかしいまは3Dプリンタがある。エンプラの製品開発を気軽に試せるようになり、樹脂製品の可能性が広がっている。エンプラに混ぜるファイバーの配合や1本の長さによって強度は変わる。当社はお客様の要望に合わせて素材をブレンドした最適な材料提供もでき、製品開発のサイクルタイム短縮に役立てて欲しい。

日本とドイツは比較されることが多いが、日本のGDPはドイツの2倍もあり、機械や装置メーカーもたくさん存在している。当社の製品で貢献できる可能性は高く、日本市場は注力市場でもある。特に樹脂ベアリングは日本ではこれから。力を入れて広めていきたい。

■イグス


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。