【インタビュー】シチズン千葉精密 中川社長と追杉執行役員に聞く、超高精度制御を実現
小型精密モーターメーカー シチズン千葉精密
中川康洋 代表取締役社長、追杉豊 執行役員 開発部部長に聞く
ロボットハンドを筆頭に、これからの機械はますます精密作業分野に広がっていき、高い制御精度が求められる。従来のスピードやパワーに加え、しなやかさや柔らかさといった繊細なタッチ、静粛性や低振動といった要素も重要となる。
シチズン千葉精密は、半導体やFPD製造装置、精密測定器、医療機器など超高精度が求められる分野で実績が豊富な小型精密モーターメーカー。精密作業の高度化に向けた提案を強化している。
中川康洋代表取締役社長と追杉豊執行役員 開発部部長に話を聞いた。
半導体・医療機器など実績豊富
5期連続増収増益
—— 御社について教えてください
小型精密モーターと周辺機器メーカーとして1979年に創業し、2007年にシチズングループに加入した。リニアモーターとブラシレスモーター、ガルバノスキャナ(揺動モーター)の3つの分野で製品を提供している。高速回転と高精度な制御ができ、特にハンドピース用途では音が静かで振動も少なく、人体の近くで使っても安全安心というところに技術的な強みがある。
当社の場合、カタログに掲載されている標準品を販売するのとは異なり、お客さまの要望に応じて設計開発から行うケースがほとんど。例えば有機EL製造装置の露光装置に特化した小型精密モーターなどを開発している。ニッチ市場にターゲットを絞り、5期連続の増収増益で進んでいる。
—— どのような製品に採用されていますか?
極めて高い精度が求められるニッチ製品が多く、他社にはできない領域がほとんど。多いのは、半導体・FPD、医療・美容機器、計測・分析機器、FA・ロボティクスの4分野だ。
半導体・FPD産業は精度要求がとても厳しく、前工程の半導体・FPD露光装置、ウエハ欠陥検査装置等、ターボ分子ポンプ、後工程のウエハダイシングマシン等で採用されている。露光装置や欠陥検査装置ではレンズアライメント用モーターとして微細パターンの印刷と品質検査を行い、ターボ分子ポンプでは高速回転を生かして短時間で高真空を発生させる用途で使われている。精密にウエハをチップ単位で切断するウエハダイシングでは6万回転の超高速モーターが採用されている。
医療・美容分野について、医療機器では義歯加工機の世界トップメーカーに採用されているほか、目の検査に使われるOCT(オプティカルコヒーレンストモグラフィー)にガルバノスキャナが使われている。またメガネのレンズ加工用のレンズエッチャーにコアレスDCモータ・ブラシレスモータが搭載されている。医療分野は高い安全性が求められるが、それらもクリアしている。
また、医療従事者が頭からかぶって顔全体を覆い、フィルタを通して清浄な空気が送られてきてウィルス感染を防ぐ電動ファン付きマスクにも当社のモーターが使われている。人の動きを助力するパワーアシストスーツ向けにはモーター一体型のアクチュエータを提供している。
ウェアラブル機器の場合、モーターの回転音や振動が着用者のストレスの元になる。当社のモーターはそれらを最小限に抑え、ハンディや持ち運ぶ、身につけるといった人体の近くで使う用途に適しており、そこが高く評価されている。
計測・分析機器では、LiDARセンサや共焦点顕微鏡にガルバノスキャナが、電子顕微鏡にはリニアアクチュエータが採用されている。
手術ロボット向け製品開発も
製品に「付加価値」
—— FA・ロボット関連はいかがですか?
レーザーマーカー世界大手メーカーの製品には当社のガルバノスキャナが多く採用されている。食品パッケージは、コンベアで流れる一瞬の間に製造年月日等を印字しなければならず、そうした用途で活躍している。レーザー応用製品に使用されるガルバノスキャナは広がる可能性を秘めていて、今後に向けて期待は大きい。
ロボット分野は注目している領域のひとつだ。小型精密という特長を生かし、ロボットの指先を微妙な感覚で動かす用途の製品開発を進めている。いま多くのメーカーが遠隔手術ロボット開発に取り組んでいるが、専用の製品開発を進めている。
—— 今後について
今後、特に伸ばせそうな分野は、ガルバノスキャナを使ったFA分野と、ブラシレスモーターを中心とした医療機器とロボット分野。
ユニークな製品では、オートクレーブ対応滅菌モーターを開発し、インプラントなどの医療分野で好評だ。インプラント手術ではドリルやソーのユニットが使われるが、それらは一回使ったら感染防止のために廃棄されるのが一般的だ。それに対して当社の滅菌対応モーターはオートクレーブの中に入れて100℃以上の水蒸気と熱で滅菌できる仕様にし、ユニットが繰り返し使えるようになった。医療機器以外にも広がる可能性があるだろう。
当社のミッションは、お客さまの製品に付加価値をつけること。そのため技術も製品も尖ったものばかりだ。お客さまもそこに期待しているので、それに応えていかなければならない。
またモーターや制御に関する課題に対する最後の駆け込み寺として使ってもらっているケースも多い。今後はそうした案件も増えてくると想定しており、その整備も進めていきたい。