『3Dプリンター』が日本のものづくりを変える! デジタル化・ネットワー...

『3Dプリンター』が日本のものづくりを変える! デジタル化・ネットワーク化が創る未来

3Dデータをもとに、あらゆるものを実物として再現できる「3Dプリンタ」の登場が産業界に衝撃を与えたのは数年前のこと。

ものづくりを担う製造業だけでなく、医療やエンタメ分野など、幅広い領域でその活用が期待されています。

2019年の3Dプリンタ市場規模は560万台超に

IT業界の調査会社ガートナーが2015年9月に発表したレポートによると、全世界の3Dプリンタ出荷台数は2015年が24万4533台、2016年には2倍以上の103%増で49万台を超えるとの予想です。

2016年から2019年にかけては、毎年2倍を超えるペースで出荷が増え続け、2019年には560万台超に達するとみられます。

ほぼ「倍々ゲーム」で市場が拡大するとの分析です。

 

ガートナーのリサーチ担当バイスプレジデント、Pete Basiliere氏は、「あらゆる技術面で品質と性能が急速に向上していることが、企業向けと一般向けの両分野で需要を伸ばし、市場規模の拡大につながっている」と述べています。

これまで3Dプリンタといえば、数百万円するような工業用モデルが中心になっていましたが、日本の家電量販店でも10万円程度の廉価モデルも販売されており、いよいよ一般向けの普及も拡大しています。

いよいよ試作から実際の製造段階に

技術の発達で、3Dプリンタはいよいよ試作から実際の製品を製造する段階に移っています。

3Dプリンタ市場でトップシェアを誇る米ストラタシスでは、子会社のレッドアイを通じて、製品の製造を手がけています。

自動車メーカーから航空宇宙産業、医療機器メーカーなど、さまざまな業種・産業から模型や製品の注文を受けますが、データさえあればたいていのものは製造できるといいます。

 

3Dプリンタの世界シェアで39%(2012年時点)をにぎるストラタシスをはじめとする米国勢が一歩リードしていますが、中国などでもものづくりの現場に3Dプリンタを活用する動きが広がっており、世界的な製造業の潮流を変える可能性があります。

日本でも、「欧米に比べて技術開発やビジネスモデルで遅れている可能性がある」として、官民で3Dプリンタの技術発展や普及に向けた取り組みを進めています。

武藤工業、特殊な石膏で人体そっくりのレプリカを作成

3Dプリンタの活用は、さまざまな分野でのものづくりに広がっています。

大判プリンターメーカーの武藤工業(東京)は、2016年2月から人の臓器に近い感触の模型を3Dプリンタで作るサービスを開始しました。

医療関連のシステム開発を手掛けるアールテック(静岡県浜松市)との共同開発で、水にひたすとプルプルとした触感になる特殊な石膏を使い、実物の臓器に近い形状と感触を再現。

 

これまで小動物の臓器で実習を行ってきた教育機関や、患者個人のデータをもとに生体レプリカを策定し、手術方法を検討するといった医療機関からの需要などを見込んでいます。

従来品に比べ部品が45%、NASAが3Dプリンタ製ロケット部品の実験成功

米航空宇宙局(NASA)は2015年8月、3Dプリンタで作ったロケットエンジン部品の試験が成功したと発表しました。

3Dプリンタで製作したのは、ロケットエンジンで燃料を供給するためのターボポンプです。

内部のタービンを毎分9万回以上という速度で回転し、マイナス240度という超低温の液体水素を大量に供給したり、燃料が3315度を超える高温で燃焼するといった、過酷な状況で使用する部品です。

 

今回の実験では、毎分1200ガロン(約4542リットル)もの液体水素を供給することに成功。

これで、3万5000ポンド(約1万5876kg)の推力を持つロケットエンジンが実現できるといいます。

3Dプリンタ製のターボポンプは、溶接などで製造した従来品に比べ、総部品点数が45%に削減され、製造工程を簡素化できたのが大きなメリットです。

 

開発作業を効率的にし、リスクやコストを削減できると期待されています。

将来的には、ほとんどの部品を3Dプリンタで製造したロケットの開発にも取り組むとのことです。

3Dプリンタでオフィスを作る、UAEの取り組み

「3Dプリンタでオフィスを作る」というちょっと変わった取り組みを行っているのが、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイです。

面積は約2000平方フィート(約186平方メートル、約56坪)。

建築は、高さ20フィート(約61メートル)という巨大な3Dプリンタを使い、建物だけでなくデスクやイスといった家具まで作成する計画です。

 

3Dプリンタによる建築は、従来の工法と比べ建築期間を5割から7割短縮でき、作業員にかかるコストを5割から8割減らせるといいます。

また、建築にかかわる廃棄物の量も30%から60%削減できるそうです。

日本のものづくりに変化をもたらすか

デジタル化、ネットワーク化の波の中で、今後、業界を問わず3Dプリンタを実製品の製造手段として採用する企業はどんどん増えていく見込みです。

職人技的な技術と品質を強みに発展してきた日本のものづくりも、3Dプリンタの発展で大きな変化を求められる可能性があります。

デジタル化した製品づくりに特化するか、それとも人の技にこだわった高価格な製品づくりを維持していくか、まさに岐路といえるでしょう。

 

出典:『日本の製造業革新トピックス』株式会社富士通マーケティング


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