「やってる感」という技術者育成の罠
色々な技術者の方と話しているとよく聴く話があります。
「この評価試験は自分で行います」
「この加工は自分で行います」
「この試作は自分で行います」
試験や加工、そしてものづくりの試作など、技術者にとって現場作業というのはとても多いものです。
材料試験や試験片加工、ジグの試作など、手数(てかず)がいくらあっても足りないことも多いのではないでしょうか。
もちろん、やったことのない試験や作業は時に多くの発見をもたらし、視野を広げることにつながります。
ところが、育成という観点では罠があります。
「定常業務」の危険性
作業というのは自分の時間も取られてしまうし、本当に忙しい。
そして、作業は必ずどこかの段階で
「定常業務」
になります。
技術者としては成長するというより、
「経験の範疇で仕事をする」
ことになるのです。
これはとても危険な状態です。
「やってる感」を感じる技術者
何か一つのことを極める職人は別です。
職人というのは、1つのことを徹底的に深堀りし、極めることでその道の一線に立つことになります。
ところが、企業に勤める技術者が、
「自分はこれしかやらない、これを極める!」
というのは、各業界で既に抜群の知名度と実力を有する場合を除いて、柔軟性が求められるこのご時世の企業体質としては好ましいとは言えません。
定常作業を大量にこなして、いわゆる、
「やってる感」
を感じている技術者が多いようでしたら、是非環境を変えることをお勧めします。
自ら課題を見つける「自主性」と、それを解決できる「実行力」を養うには、常に上をめざし、自己研鑽し続けるという気持ちが大切です。
やってる感を感じている時点で、成長は停滞しているのだ、ということを技術者自身はもちろん、技術者指導者層の方々も気が付くことが肝要です。
やってる感ではなく、常に企業組織を成長させるような前向きな技術者を増やすことを心がけてみてください。