「ものづくり」と「製造業」日本が進むべきはどっち?

「ものづくり」と「製造業」日本が進むべきはどっち?

 よくテレビや新聞等で「日本はものづくりの国である」と言うが、身の回りのものでメイドインジャパンはどれくらいあるだろうか?また、日本の工場で作られた以外のものがなくなったらどうなるのだろうか?「ものづくり」という言葉は響きも美しく、日本人の琴線をくすぐる。しかしそれは製造業の実態と問題を覆い隠してしまう。

 ▼先日中国の上海を訪れ、製造業向け展示会を見学してきた。そこで見る製造業の光景は日本とは異なっていた。例えば産業用ロボットを使ったデモンストレーション。バリ取りのデモでは変わった形の金属部品のバリ取りをしていた。よく見ると、それは4つ又になったイスの足の部分だった。また、携帯電話の筐体の磨きやキーボードの耐久検査など、日本では滅多に見かけないデモがいくつも展示されていた。現地のロボットメーカー曰く、中国では何でも作っているからアプリケーションも様々なのだそうだ。それを聞いた時、自分の持ち物、身の回りのもののほとんどが中国製であることに改めて気づき、中国製造業の幅の広さと強さを感じた。

 ▼日本は確かに素晴らしい技術を持った国である。しかし一部を除けば、メーカーの仕向地はまだ国内市場か海外の日系企業向けが中心で、世界に広がっているとは言い難い。技術力の高さと、ビジネスの成功は違う。ものをうまく作る力と、新しいものや魅力的なものを考え出す力、売る力が合わさって初めて製造業である。私たちは製造業でビジネスをしているのであって、多くのユーザーに製品やサービスを届け、使ってもらうことを第一に考えなければいけない。つくる技術の高さを誇るだけなら、それはビジネスではない。


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。