《難解》な若手技術者の技術報告書

《難解》な若手技術者の技術報告書

技術報告書の大切さは何度も述べているので認識されてきてはいるのですが、そもそも書かせたものの内容の意味がわからない、つまり《難解》である
というケースが非常に多いようです。

原因の一つとして真っ先に挙げられるのが、

「文章作成力不足」

です。

 

当然ながらこれは一因であることに疑いの余地はありません。

文章作成力を鍛えるのに最重要なのは文章を作成するという「経験」です。

ところが、ここで忘れられがちなことが一つだけあります。

 

それは、

「そもそもなぜこの報告書を書かなくてはいけないのかという“背景”に関する説明が不足している」

ということです。

 

自分でテーマやプロジェクトを動かすレベルにあれば、

「自分で考えていることなので、背景含めて理解している」

というのは当然のことです。

 

しかし、若手技術者の多くは、

「これやっておいて、あれやっておいて」

といわれとりあえず仕事を進め、その上で、

 

「報告書書いて」

といような仕事の振られ方をしているかもしれません。

そうすると、やったことを何となくまとめることはできたとしても、

 

「何故これをやったのか」

「この結果によって得たいものは何なのか」

というところまで思考が到達することは困難です。

 

これを能力不足と判断するのはやや勇み足というべきです。

特に多くの仕事を振られている場合、自分自身の処理能力が不足し深いところまで考える余裕がなくなります。

そこに追い打ちをかけるように、

 

「報告書の内容が意味わからないぞ」

と失跡しても若手技術者を追い詰めるだけです。

それよりも、

 

「今回やってもらったことは、こういう背景があって、こういうことを知りたいためにやってもらったことである」

ということを報告書作成前にきちんと説明することが重要です。

これにより、若手技術者を指示している指導者と同じ思考回路に近づいてきます。

 

こうなって初めて、

「文章作成力はどのくらいなのか」

ということを議論できるようになるのです。

 

技術報告書を書かせる前の背景説明。

是非、日々の業務の中で心がけてください。


◎FRP Consultant 株式会社 代表取締役社長◎福井大学非常勤講師 ◎FRP(繊維強化プラスチック)を用いた製品の技術的課題解決、該関連業界への参入を検討、並びに該業界での事業拡大を検討する企業をサポートする技術コンサルティング企業代表。現在も国内外の研究開発最前線で先導、指示するなど、評論家ではない実践力を重視。複数の海外ジャーナルにFull paperを掲載させた高い専門性に裏付けられた技術サポートには定評がある。