《ノウハウの蓄積》の文化構築による若手技術者育成
ものづくり企業にとって、ノウハウの蓄積というのは極めて重要なものの一つです。
低コストを武器に躍進の続く中国や東南アジアのものづくり業界での存在が強大になった今、“ノウハウの蓄積”は生き残り戦略の一つといえます。
このノウハウ蓄積に最も重要なのは、「文章による蓄積」の一言に集約されます。
ドイツのマイスター制度と類似し、職人文化の強い日本のものづくりの根底にあるノウハウは熟練者の経験に基づくものに依存してきました。
今後も職人のようなエキスパートがものづくり最先端を支えるという文化は残るのは間違いありません。
しかし、これだけに頼っていては、将来日本のものづくり企業はじり貧になっていきます。
これを避けるために極めて重要なのが、文章によるノウハウの蓄積です。
文章を書いて自分のやったことを残すというのは、後任や別の部署の人間に自分のノウハウを伝えることにつながるため、当然主目的であるノウハウ伝授の役割を担うことができるでしょう。
ここで更なる効果が期待されます。
それは、
「文章を書くことによって培われる論理的思考力により、自分の仕事を客観的に振り返ることができる」
という優れた副作用です。
特に若手技術者を中心に、自分のやったことを文章として残すという一連の文化を醸成することは、技術者個人の論理的思考力の底上げにつながり、これが結果として技術者たちの思考力を高めることにつながっていくのです。
自分の行ったことを文章作成することで鍛え上げられた論理的思考力というのは、新興国だけではなく先進国でもできる技術者が極めて限られてきます。
論理的思考力は自らの客観的な振り返りと広い視野という、技術者に必須のスキルであるため、ものづくり業界での競争力維持のためにはとても重要なものです。
是非、競争力維持のため文章でノウハウを蓄積するという基礎文化を社内文化の一つとして構築し、ノウハウ伝授はもちろん、論理的思考力をベースにした若手技術者の底上げを目指していただければと思います。