シリコンバレーで未来を体験する重要性

シリコンバレーで未来を体験する重要性

昨年の今頃まで個人的に行きたい国・地域のナンバーワンは中国だった。13億人に支えられる巨大市場と世界の工場と言われる製造業、急成長するローカル企業など、いまの製造業を語る上では外せない要素に溢れている。昨年秋、ついに願いが叶い、1週間ほど滞在して実際の様子を見ることができた。そして今、行きたい場所が新たに生まれた。アメリカのシリコンバレーだ。

▼8月2日、品川で開催されたSAPのイベント「SAP SELECT」に参加した。そのなかでシリコンバレーにあるSAPラボに在籍している小松原威プリンシパルによる特別講演「企業におけるイノベーションの起こし方」を聞き、目からウロコの衝撃を受けた。Google本社のすぐ近くに住む小松原氏は、普段から無人で走行する自動運転車を見かけ、家ではAmazonEchoを通じてAIアシスタントのAlexaを利用しているとのこと。さらに街に出てタクシーを拾うのはUber。そして人種も性別もさまざまな世界から集まった人々に混じって仕事をし、数多くのスタートアップ企業を見てきている。私たちが想像するちょっと先の未来をすでに実践し、さらにその先の技術やアイデアにも触れるチャンスに身を置いており、とても眩しく見えた。

▼シリコンバレーは、古くはヒューレットパッカードにはじまり、インテルやApple、Google、Facebookなど、時代の変革者を多く輩出してきた。「破壊的なイノベーション」とも言われる、新たな技術やビジネス、文化をいくつも生み、IoTやロボット、AIといった最先端技術を普通に利用する世界をすでに実現している。いまは大変革時代。従来の延長線上にない荒唐無稽なものでも、人がそれを試して、受け入れる土壌や雰囲気が作られつつある。日本でもスタートアップやベンチャー企業が脚光を浴びる時代になっている。社会生活に必要なものを作り、提供する製造業としては、スタートアップの一大拠点となっているシリコンバレーで起きていることを無視することはできない。アンテナを高く張り、その動向をウォッチし、活用することが重要だ。


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。趣味は釣りとダーツ。