連載小説『改善提案名人に挑戦!』第1話チリツモ作戦 (3)整理・整頓は「チリツモ作戦」で
※毎週金曜日更新
※目次とアーカイブはこちら
第1話 チリツモ作戦
(3)整理・整頓は「チリツモ作戦」で
月曜日、上杉君は職場に帰ってから考えた。
酔っ払っていたせいか、どうも斎藤君の話はマユツバのような気がする。
でも理屈の上では、「チリツモ作戦」(チリもツモれば山となる)で確かに年間400万円のコストダウンとなる。
そこで、物は試し、改善提案用紙に同じような内容を書いて出してみた。
数日後、事務局から回答が返ってきた。
こんなことが書いてある。
「ライン全体を見て、もう少しよく検討された改善提案をして下さい」
「はは、やっぱりこんなんじゃ採用してくれないよなぁ」
そう言って、提案用紙を丸めてゴミ箱に捨てようとした。そこに通りかかった武田部長。
「おっ上杉、改善提案なんて珍しいな。どれ見せてみろ」
「勘弁して下さいよ。めちゃくちゃな内容なんですから」
上杉君の言葉を無視して、課長は読みつづける。そして、おもむろに顔を上げると、
「悪くないじゃないか。着眼点はかなりのもんだよ」
「またまた、課長、からかわないで下さい。それなら、なぜボツなんですか?事務局のコメントを読むと、まるっきりお話になっていないみたいな書き方ですよ」
「ふむ、そんなふうにも見えるな。ただ……これでは改善になっていないというのも確かではあるがね」
武田課長のいわく、着眼点としては合格、改善点としては不合格なのだそうだ。
「まず、きみが整理・整頓を目的にこの改善を提案したならば、50点あげても良い。でも、単純な手の動きだけでなく、物の保管の仕方や作業台・装置の位置にも気を付けて欲しいな」
物を近くに置くということは、いわば作業場所をコンパクトにまとめるということだ。これは、整理・整頓するということと同じことである。
反対に考えれば、整理・整頓すると物が取り易く作業もやりやすいし、間違いも少なくなるということ。
つまり、物の置き方に限らずそういう見方で考えていけば、まだまだ重要な問題が見出せるはず、ということだ。
これが、着眼点としてはGOODであることの理由。では、改善提案としてはなぜ不合格なのだろうか?
(続く)
※毎週金曜日更新
※目次とアーカイブはこちら
出典:『改善提案名人に挑戦!-だれもがプロジェクトXだった-』面白狩り(おもしろがり)
連載小説『改善提案名人に挑戦!』第1話チリツモ作戦 (1)まずは質より量で
連載小説『改善提案名人に挑戦!』第1話チリツモ作戦 (2)ものの位置を変えるだけで良い?