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製品を○○の束と考えれば現場のIoTが上手くいく

製品を○○の束と考えれば現場のIoTが上手くいく

製品をメッセージの束、情報の束ととらえると、現場のIoTを上手く進めるヒントが得られる、という話です。

高付加価値化のために、顧客視点で「コト」に注目します。

新たな「コト」は既存の技術からでも「組み合わせること」で生まれる可能性があります。

 

製品は、「コト」を反映した情報が、現場でメディアに転写されたものです。

1.製品やサービスの高付加価値化では「コト」を考える

製品やサービスの高付加価値化では「コト」を考えます。

顧客視点です。

「コト」とは、経験や体験、達成感、満足感、人間関係、有能感、思い出、共感、一体感、等々、目に見えない価値です。

 

客先へ足を運んで三現主義に徹し、「見える現実」に加えて、「見えない現実」も把握し「コト」を探ります。

単に市場に顕在化しているニーズへ直接に応えるだけではなく、さらに一歩踏み込んで、新たに市場を創出します。

有名な話ですが、iPhoneは既存の部品を組み立てて開発されたそうです。

 

独自の技術をiPhoneに導入したわけではなかった。

それでも売れました。

今では当然にやられていますが、iPhoneを購入した消費者は、自分が聞きたい音楽をインターネットを通じてデジタルデータでダウンロードできるようになりました。

 

気軽に音楽をデータとして手に入れられる楽しさという「コト」を新たに生み出し、それが、世界中の消費者の圧倒的な支持を集めました。

それまでの消費者は、CD等のメディアを準備し、プレーヤーにそのメディアをセットして音楽を楽しんでいました。

私もそうでしたし、多くの方々もそうだったと思います。

 

これが「見える現実」でした。

この状況を不便に感じていたかどうか?

音楽はCDで聞くものというアタリマエの意識が強くて、不便さを感じるところまではなかったような気がします。

 

「コト」を生み出すにはここから一歩踏み込まねばなりません。

スティーブ・ジョブズやアップルはそれができたのだと思います。

消費者が“潜在的に”望んでいるのは優れたハードではなく、音楽を手軽に楽しむ環境である ことに気付いた。

 

今は具体的なサービスがなくて、消費者自身も気が付いていないかもしれないが、より便利に音楽を聴くことができるサービスが目の前にあれば必ず飛びつくはず、と考えたのでしょう。

そこで、iPhoneというハードに音楽配信サービスを組み合わせることで、新たな「コト」を生み出した。

新たな「コト」を生み出すコツのひとつに「組み合わせ」があります。

2.新たな「コト」を考える時は組み合わせで考える

なにか新しいものを生み出そうと考えた時、ついつい「白紙」から考え出そうとして、う~ん、アイデアが出ない……、行き詰った!! となる場合があります。

画期的な成果を狙おうとすれば、ますます、そうなってしまう……。

そうではなく、新たな「コト」は、組み合わせから考えるのが早道のひとつです。

 

iPhoneのようにです。

先の事例、リコーのプロジェクター+授業ノウハウ、クボタの田植え機+効果の体験も同じような考え方に基づいていると言えます。

ですから、まずは従来製品を軸に組み合わせで考えます。

 

(1)従来製品 + サービス

(2)従来製品の改良 + サービス

 

従来製品に何らかのサービスを加えるか、従来製品を改良して何らかのサービスを加える、この2つから新たな「コト」が生まれないだろうか? と考える。

IoTを活かした新たな「コト」として、例えば、General Electric(GE)の航空機のエンジンおよび発電システムでのタービンの事例がありました。

まずは自社製品をじっくり眺めます。

 

例えば、設備の消耗部品を供給しているなら、それを実際に使用している現場へ出向き、消耗具合を見て、交換時期を見通すとか、あるいは摩耗がしにくい形状を提案するとか。

取り扱う製品次第ですが、産業財に関連した部材を扱っているならばエンジニアリングの要素を事業に加えるのが一つの方向性です。

また、消費財であるならば、より一層、消費者の中へ入り込んむことになります。

 

消費財であろうが、産業財であろうが、供給側として、それを“使う”、あるいは“楽しむ”側の「思考」も持つことが欠かせません。

3.製品は顧客へ向けてのメッセージの束

顧客が感じる「コト」と合致して、初めて商品の価値が評価されます。

音楽をダウロードで気軽に手に入れて楽しみたいという新たな「コト」に合致したiPhoneのような商品。

ですから、我々モノづくり工場は、「コト」につながる「メッセージ」を製品を通じて顧客へ届けなければなりません。

 

顧客が問題を解決したり、希望を叶えたりできるように、製造者の想いや手段がいっぱい乗っている媒体(メディア)が製品であると考えられます。

製品は顧客へ向けての「メッセージの束」と表現できます。

「メッセージの束」が「コト」にぐさりと刺されば、ストライク!!

 

性能や機能、仕様等の側面でとらえる「モノ」から、使う側の満足感、不満解消等の側面でとらえる「コト」へ。

こうした意識が、独自の製品開発や自社ブランの育成につながっていきます。

改めて自社製品をじっくり眺めます。

 

自社製品は、お客様になんらかの有益な情報を届けてくれているわけです。

我々が市場に届けたいメッセージをお客様へ届けてくれているのが自社製品である。

自社製品を様々な切り口で眺めることで新たな知恵も浮かびます。

4.ものづくりの現場でメディアに情報を転写する

製品は顧客へ向けてのメッセージの束です。

現場では顧客へ届けるべきメッセージを具体的にはどのように付加しているでしょうか。

藤本隆宏先生の「生産マネジメント入門Ⅰ」の中で下記の説明があります。

 

「(製品は)、特定の有用な製品設計情報(使用価値を担った情報)が有用なメディア(素材)の上に刻印された情報資産とみなせる」。

 

製品をメッセージの束と捉え、製品は情報の束として考えます。

有用なメディア(素材)に情報が刻印されていると解釈します。

なるほど、現場の各工程で「使用価値を担った情報」が次々と素材に刻印されていくイメージです。

 

顧客の「コト」につながる仕様を表現したプログラムを設計者は立案し、それをNC加工機へ入力し、NC加工機をプログラムに従って稼働させて、「コト」を表現した仕様を、切削加工を通じて素材に刻印する。

こんな感じです。

設計者の頭の中のアイデアが素材へ乗り移ったイメージが浮かびます。

さらに藤本隆宏先生「生産マネジメント入門Ⅰ」では下記のように表現されています。

 

「生産の“活動”とは、生産資源の間の広義の情報のやりとりのことだとみなせる。

ある資源から別の資源へ情報が発信されることによって、同一内容の情報が異なる媒体に乗り移る場合、これを“転写”と呼ぼう」。

 

別の例として、プレス加工を想定します。

金型は、顧客に届けたい製品情報が刻印されているメディアと解釈します。

顧客に届けたい製品情報は、快適なドライブを演出する車のボディー形状に関する情報かもしれません。

 

または、仕事の能率を向上させるためのパソコンの筐体形状に関する情報かもしれません。

この金型で鋼板をプレス加工することで、平面の鋼板へ「情報」を「転写」することになります。

この場合、情報資源は「金型形状」と「プレス機の稼働プログラム」であり、金型が情報の「発信側」、鋼板が情報の「受信側」となります。

 

現場の各工程で、情報の発信側と受信側があって、情報資源のやりとりをしている、と解釈します。

また、藤本隆宏先生「生産マネジメント入門Ⅰ」では下記のように説明されています。

 

「生産システムはこうした資源(情報資源)と活動(情報の発信・受信)の体系とみなすことができる」。

 

プレス加工に限らず、溶解、熱処理、切削加工、鋳造、鍛造、溶接、組立…ありとあらゆる要素技術について、同様の解釈ができます。

このように考えると、工場の各工程のイメージが沸き易くなります。

工場全体を一気通貫で把握するとき、全体像を把握する時に役に立ちます。

 

モノづくり工場では、お客様が欲している「コト」を実現するための「情報」を反映させた「情報」資源を活用し、お客様へ届けるメディアへ、その「情報」を各工程で少しずつ転写する。

必要な「情報」が全て転写された姿が最終製品です。

それをお客様に届け、満足頂く。

 

最終製品に込められた作り手のメッセージが「コト」にぐさりと刺さるかどうかは転写された「情報」の質次第です。

このように考えると、モノづくり工場の現場を従来と違った目で見ることができます。

インダストリー4.0にしろ、インダストリアル・インターネットにしても、もののインターネット(IoT)をはじめとして情報通信技術(ICT)を大いに活用します。

 

ICTで扱うのは、当然「情報」です。

製品をメッセージの束、情報の束と解釈したうえで、モノづくり工場の現場を情報の流れで把握しておくことは、ICTを活用する時に、大いに役に立ちます。

まとめ。

高付加価値化のために、顧客視点で「コト」に注目する。

新たな「コト」は既存の技術からでも「組み合わせること」で生まれる可能性がある。

製品は、「コト」を反映した情報が、現場でメディアに転写されたもの。

 

製品をメッセージの束、情報の束ととらえると、現場のIoTを上手く進めるヒントが得られる。

 

出典:株式会社 工場経営研究所 伊藤哉技術士事務所

 


製造業専門の工場経営コンサルタント。金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。 大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。 その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。 技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)