若手技術者を《あるべき姿》に導く技術者指導者層の姿勢
技術者を育成してあるべき姿に導くには個々人の個性を考慮しながら進める必要のある、非常に慎重さの求められる難しい仕事です。
この仕事を少しでも進めやすくするためには、「技術者指導者層がその見本を見せる」ということによって育まれる「信頼関係」こそが重要です。
この考え方、実は昔から親や上司のあるべき姿として述べられてきています。
沢庵不動智神妙録にかかれているものを引用してみます。
ここでいう沢庵は、沢庵宗彭のことで、戦国末期に生まれ仏教を追求し、仏法実現に生き抜いた人物として知られています。
日本兵法の確立にも影響を与えたその考え方の一つに、「親がまず身を正せ」という文言があります。
沢庵の原文には、親のみ正しからずして、子の悪しきをせむること逆なりと書かれています。
子供の悪事を叱るのであれば、まず親が正しいことをしなければならない。むしろ、親が正しいことしていれば、子供もそれを真似るようになる、ということの意味のようです。
これは技術者育成についてもいえることで、若手技術者にそうなってほしい、と思うのであれば自らが実践してその姿勢を示すことが若手技術者にとって何よりの勉強になります。
例えば、若手技術者から質問を受けて技術者指導者層の方がわからなかった場合。
「とりあえず、自分で調べておけ」ということもできますが、「これについては私の方で調べておく。わかったら議論しよう」といえば、若手技術者も後に自主的に調べるということを実践するようになります。
もし、技術者指導者層の方々が見本を見せても変わらないようであれば、その時に「自分で調べてみなさい」といえばいいのです。
見本を見せられている人間から言われた言葉は、非常に重いものとして相手に伝わるはずです。
改めて自分が若手技術者のあるべき姿を実践できているかどうか見直してみることも時には重要かもしれません。