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若手技術者に《自信》と《自覚》を芽生えさせるには

若手技術者に《自信》と《自覚》を芽生えさせるには

実績を積んできた技術者育成者が得ることの多い、目立つ成果につながる仕事の機会。

これをできるだけ早い段階で若手技術者に回すことが、将来への投資となります。

技術者指導者層となっている技術者の方々は、その立場になるまでに高い成果を上げてきていることが多いです。

 

そのため、評価される成果が何なのか、ということも理解しています。

組織としては安定した成果を出すことのできる技術者に仕事を与えたいと思うことが多いのですが、あえて若手技術者にチャンスを与えてみてください。

このチャンスを与えるという機会は早ければ早いほど投資価値というものが上がっていきます。

 

なぜかというと、早い段階で「成果を出すという事はどういうことなのか」を理解することは、若手技術者の仕事のスタイルが成果を積み上げるための効率化に向けて変化し、成果を得ることで自信が持てるようになります。

そして、何より効果的なのが、「業務に対する当事者意識という”自覚”が芽生える」ということです。

自分でやったことが成果として評価されるという事は、技術者として最大の報酬であり、それと同時に「自分はここについて実績を残していかなければならないのだ」という意識改革が進むこととなります。

 

恐らく、技術者指導者層の方々の多くはこのメリットの何となくは感じつつも、成果につながる仕事を自分で抱え込むという傾向があります。

このように考えてしまう主な理由は以下のようなパターンがあるようです。

 

1.若手技術者に仕事を任せられるほどのスキルが無い
2.若手技術者がその仕事に委縮してしまう
3.上司が成果が欲しいために部下に仕事を回したくない

 

それぞれについて対策を説明します。

1.若手技術者に仕事を任せられるほどのスキルが無い

これが最も多い傾向があります。

やはり、成果につながるような大切な仕事はスキルが不足する若手よりも、実績を残しやすい中堅以上にやってもらいたいのが人情というもののようです。

もちろん、任せるタイミングというのはその若手技術者のスキル、状況、さらには仕事の内容にもよるのですが、技術者指導者層である上司から見て60点くらいの状態まで来ていれば任せられる状況といっていいかもしれません。

 

第一歩としてはこのように任せるためのハードル(しきい値)を下げることです。

そして一度任せたら手や口を出さないことです。

マージンを持って期限を切ることで万が一の時には上司や中堅社員がフォローできる体制を構築する必要がありますが、本人が白旗を上げるまでは徹底的に任せてみてください。

 

これこそが仕事に対する自主性を育むことにつながります。

若手技術者がマイペースなタイプの場合、期限に対しては厳しく要求し、継続した適度な圧力をかけることも合わせて重要です。

2.若手技術者がその仕事に委縮してしまう

仕事を任せようとしたら、意外にも乗る気でないという表情が見て取れた、というお話をよくききます。

口では「成果が欲しい」「我が社の上司はだめだ」というようなことを発言する若手技術者も、いざ自分がそれをやる側に回ると委縮するという事は意外にも多いものです。

このようなケースにおいては「業務命令としてやらせる」という考えもありますが、この場合、「やらされている」という意識が必ず残ります。

 

これが仕事や上司に対する不満、そしてモチベーション低下へとつながっていくこととなるのです。

もし若手が乗る気でない場合。

「無理にとは言わないけど」という前置きをして、「この仕事をやり通せば、こういう成果が得られ、こういうスキルがあなたにみにつきます」ということをある程度時間をかけて説いてみてください。

 

仕事をやってもらう方向に持って行っているのですが、最終的には自分で、「やってみます」と言わせることが重要です。

3.上司が成果が欲しいために部下に仕事を回したくない

残念ながら散見されるのがこのパターンです。

そしてこのパターンのやっかいなことは、このような判断が「無意識に行われることが多い」ということです。

これについては、仕事を任せる側の問題ですので自分で自分を振り返るしか方法がありません。

 

なぜ自分の部下は育ってこないのだろう。

このコラムをお読みの方が、この悩みを抱えている上司ご自身である場合、自分でその理由を紙の上に書いてみる、というのが一つの方法です。

活字で書くという事で自分をできる限り客観的に見直すことができるようになります。

 

また、自分が指導する部下の技術者が、そのさらに下の若手技術者に仕事を任せていないように見えるようでしたら、部下に仕事を任せない技術者とその点について話をしながら、理由を見つけだし、指摘したうえで状況を改善させるということが重要です。

ぜひ、若手技術者に成果を出させ、自信と自覚を芽生えさせるという事を心がけてみてください。


技術者育成研究所所長・FRPコンサルタント。入社2~3年目までの製造業に従事する若手技術者に特化した法人向け人材育成プログラムを提供し、自ら課題を見つけそれを解決できる技術者育成サポートを行う。◎東京工業大学工学部高分子工学科卒業後、ドイツにある研究機関 Fraunhofer Institute での1年間のインターンシップを経て同大学大学院修士課程修了。世界的な展示会での発明賞受賞、海外科学誌に論文を掲載させるなど研究開発最前線で業務に邁進する一方、後身の指導を通じて活字を基本とした独自の技術者人材育成法を確立。その後、技術者人材育成に悩みを抱えていた事業部から、多くの自発的課題発見/解決型の技術者を輩出した。◎11年にわたる企業の技術者勤務の後、自らの専門性を生かし複数企業と直接顧問契約を結ぶFRPコンサルタントとして独立。サポートを行う中で多くの企業が技術者人材育成に苦労している実情に直面。過去の技術者育成経験から、「一般的な人材育成」と異なる技術者に特化した「技術者人材育成」が必要と考え、「技術者人材育成研究所」を創業。FRPコンサルタントとしてFRPに関連する高い専門性の技術指導やサポートを行う一方、その受け皿となる現場の技術者の人材育成にも精力的に取り組んでいる。◎主な著書に『技術報告書 書き方の鉄則』、『CFRP~製品応用・実用化に向けた技術と実際~』(共著)など。◎Professional member of Society of Plastics Engineers( SPE; 米国プラスチック技術者協会)◎– 高分子学会(The Society of Polymer Science) 正会員◎– 繊維学会(The Society of Fiber Science/Technology)正会員◎– NPO インディペンデント・コントラクター協会(IC協会)正会員◎– 国立大学法人 福井大学 非常勤講師 http://engineer-development.jp/