自動化から始まる働き方改革、キーワードは「人を活かす」

自動化から始まる働き方改革、キーワードは「人を活かす」

現場の知見が最大の強みに カイゼン×IoT

ここ数年、デジタル化や人手不足、生産性向上に向けてIoTやロボット、AIの活用が叫ばれてきたが、その構図に変化が起きつつある。工場や製造現場にはゴールはない。これまでもずっと変化を続けてきて、これからも続いていく。

それに対応するためには柔軟性と改善力が不可欠とされ、改めて現場における人の重要性が再認識されている。19年の製造業は原点回帰。いかに製造現場で人を活かし、未来の工場へとつなげていくかの再出発を迎えている。

スマートファクトリー=無人化 ではない

製造現場にある装置同士をネットワークで結び、それぞれの状況をデータ化して現実の製造現場をリアルタイムでそのままサイバー空間に再現。さらに、知能化されて自律制御ができるようになった装置が、サイバー空間で分析されたデータ、または時々刻々と変わる状況に応じて独自に判断して動き、最適な生産を実現する。

2011年にドイツでインダストリー4.0が提唱され、製造業におけるスマートファクトリーへの筋道に示された。将来的にはすべての工場がこうした姿になるだろうとされ、ロボットやIoTの機運の高まりも相まって、世界中でスマートファクトリー、自動化に向けた取り組みが活発化している。

スマートファクトリーというと、自動化された生産ラインで自律化したロボットが動き、人がいない工場をイメージしがち。実際にロボットやAIが人の仕事を奪う、製造現場から人がいなくなるという意見もよく耳にし、「スマートファクトリー=自動化工場=無人化工場」という図式で捉えられている。しかし今、この認識が大きく変わってきている。

人の力が工場を進化させる

スマートファクトリーはゴールではない。作るもの、作る量、納期、部品・材料が変われば製造現場も変わる。工場の形にゴールはなく、常に時代や状況に応じて柔軟に形を変え、対応していく必要がある。それを担う存在こそ人であり、人が持つ柔軟性と改善力が重要となる。

人が工場で果たす役割とは、①まったくの新しいものを作る時、まず人力と手作業で生産の基礎となる手本を作ること、②手本からムダを発見して改善していくこと、③手本を自動化し、さらに改善していくこと、④カスタムや難加工など少量品に対応すること、⑤自動化ラインの停止を最小限に抑えるためにメンテナンスすること。

これらはロボットやAI、IoTでは不可能な、人でしかできないこと。もっと言えば、日本の製造業の競争力の源泉となり、「KAIZEN」として世界に認められた日本が得意としてきた現場力。熟練技術者のリタイヤや人手不足を自動化やロボット化、IoT化で補う一方、改めて製造現場における人の力の有効性が再認識されている。

初期IoT普及を担ったIT企業

IoTは、従来から使われていたM2M(機器間通信)をより抽象化し、機器や装置をネットワークにつなげ、機器からデータを収集・蓄積し、それを見える化するものとして、ここ数年で爆発的に普及した。

その主な担い手となったのが、製造業の外からやってきたITや通信、データ処理を得意とする企業。工場内の装置や設備にセンサと通信機能を取り付け、データを収集して見える化する。いわゆる稼働状況の「見える化」を各社がパッケージ化して提供し、スマートファクトリーへの第一歩として普及を進めてきた。

これからのIoTは現場の知見が重要に

しかし、ここに来てその状況が変わりつつある。情報を集めて見える化することと、そのデータをどう活かすかは別問題。先進的な企業から具体的な活用事例が数多く出てきて、これまで曖昧だったIoTへの知識や認識が高まってくるにしたがい、見える化から次のアクション、現場のどんな課題を解決するか、IoTで得たデータの活用法へとユーザーの関心が移ってきている。

例えば、この1年で故障予測や予知保全、運用サポートといった具体的なアプリケーションが増えてきているのが典型的な例だ。

そのためIoTの担い手がIT企業から、現場や製造装置、工場設備の知識や知見を持った企業、装置メーカーや機器メーカー、製造業に根ざしたシステムインテグレータや商社に移ってきている。IoTを使って何をするか、機械のどこにどんなセンサを付ければ正確なデータが取れるのか、自社の装置をIoT化して海外に販売するためにはどうすればいいのかなど、よりビジネスや利益創出に近い部分での提案が求められるようになってきた。

 

ある機器メーカーは「IT企業の場合、正確なデータを取るためには彼らに機械やプロセスをイチから教え込む必要があり、その手間が大変。当然、データを取った後には彼らからプロセスの改善提案や気づきが出てくるわけもない。そこに期待し過ぎるのは良くない」とし、同じ目線や言葉で話せる企業と一緒にやった方が効果は早く出やすいと話す。

ここでも重要なのはやはり「人の力」。現場や装置、機械の内部を知っている、それらへのデータの活かし方、改善の仕方を知っていることが重要であり、まさに19年以降はそれが求められるようになってくる。

19年のキーワード 3Kの解消とカイゼン

人手不足が深刻化する国内は、これまで同様、人手作業を代替する自動化、人の作業負担を下げる省力化がキーワードになる。さらに、今いる作業者の継続勤務、新しい人材を入れるために3K(キツイ・汚い・危険)を解消し、快適で効率的な作業環境を提供することが重要になる。製品軸で言うと、自動化・省力化機器と、クリーン・環境製品、安全セーフティへの関心がより一層高まるのは間違いない。

また国内工場は、大企業や海外に工場を展開している企業にとっては、手本となるマザー工場、海外リスクを低減するためのバックアップ工場の役割を果たし、中小企業や国内市場だけで事業をしている企業にとって、なけなしの基幹工場だ。それらが競争力を維持し、市場環境の変化に対応していくためには常日頃からのカイゼン活動の継続が必要。そのための材料やネタを提供するツールがIoTであり、ヒントを与えるのが現場や機械の知見を持ったIoTのパートナー企業となる。

19年の製造業の主役は「人」。特に現場や機械の知見を持った現場の人材と、それを技術や製品でサポートすることが重要なポイントになる。


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。2016年5月〜「ものづくりニュース by aperza」編集長兼任。 趣味は釣りとダーツ