現場が知りたいことをIoTで実現させる

現場が知りたいことをIoTで実現させる

モノのインターネット(IoT)では現場のニーズと技術的なシーズを照らし合わせて生み出される新たな価値を考える、という話です。

1.シチズンマシナリーでのIoTの取り組み

IT(情報技術)を現場に導入する際には、目的の明確が必要です。

IT(情報技術)はあくまで道具です。

したがって、何を強化するかをはっきりさせます。

品質管理や改善活動など。

 

ここで成功のイメージが浮かばないと導入効果は小さくなります。

導入してみたけれども使いこなせず、放置されたという状況になりかねません。

したがって、工場内を「つなげる」前にやるべきことは、コア技術の分析です。

自社の強みを整理します。

 

シチズンマシナリー(本社長野県)では、2015年から、自社工場の設備稼働を可視化することに取り組んでいます。

 

可視化の対象となっているのは6台のマシニングセンターです。

内訳は長野県の本社工場3台、岩手県北上市の工場2台、フィリピン工場1台。

 

稼働データを集約し、それぞれの工作機械について、

「稼働している」

「どのワークを加工しているか」

「異常は起きていないか」

という稼働状況をリアルタイムで一覧できるシステムを開発しました。

 

新開発の可視化システムでは、単に稼働データを取るだけでなく、

稼働履歴をガントチャートなどの分かりやすい形に自動で加工し、それを多くの人が簡単に共有できるようにしています。

これまで見落としていたことに気付きやすくなると関係者の方は語っています。

 

シチズンマシナリーの主業は、工作機械(CNC旋盤)の開発・製造・販売であり、顧客の多くは従業員5~10人程度の中小企業です。

 

シチズンマシナリーが、工作機械の稼働状況の可視化に取り組んだきっかっけは、こうした中小企業の顧客へ可視化システムを提供しようと考えたことにあります。

 

ただし、こうしたシステムの提案を顧客へ提案したところ次のような反応が多かったようです。

「可視化するのはいいが、具体的にどのような効果があるのか?」

 

費用対効果も示さなければ、中小の経営者を納得させられません。

開発・製造側の観点で、単に可視化するだけでは需要は広がらないわけです。

 

そこで、シチズンマシナリーは自ら、実地で検証を始めました。

(出典:日経ものづくり2016年6月号)

 

顧客目線に立つには欠かせない取り組みです。

 

2.シーズとニーズ

工場でプレス機を自家設計し内製するプロジェクトに参加したことがあります。

現場の製造担当技術者としてです。

現場での使い勝手や現場での効果的な稼働へのアイデア出しをしました。

 

設備の制御盤へ「タッチパネル」が導入され始めた頃です。

感覚的に操作ができるようになり現場でも好評でした。

 

設備設計の担当者からは、タッチパネルの機能について説明を受け、

様々なことがタッチパネルで操作でき、稼働状況データを表示できることを知りました。

 

そこで、設備稼働率のデータを表示する機能を加えることにしたのです。

 

それまで、現場では、現場責任者が都度手計算して稼働率を算出していました。

そこで、その手間を省こうと目論んだわけです。

 

しかしながら、結局、その機能は、プレス機が稼働してからも現場で使われることはありませんでした。

なぜなら、当時の稼働率は、出来高をベースで定義していたからです。

設備で評価できるのは有効稼働時間をベースにした稼働率です。

 

両者には当然、差異が発生します。

多様な分析には有効であり、現場も、当初は興味を持って眺めていましたが、

現場のニーズが無い中で、稼働率表示機能は、結局、現場では活用されませんでした。

 

表示されるデータが、どんなに工学的に正しくても、

現場で使われないのなら、残念ながらそのデータから価値は生まれません。

そもそも、そのデータを活用すると、何がいいのか?という検証が抜けていました。

これは、大いに反省をしたことです。

 

シチズンマシナリーが、自社へ導入して、実地に効果を検証できれば、

何を知ることができて、それを何に生かせるかがはっきりします。

明確な費用対効果を現場へ提示できます。

それらが、現場のニーズと一致すれば、確実に現場へ定着するでしょう。

 

導入メリットの明確化を抜きにして、なんとなく機能が優れているからとか、

従来にない機能が付加されているからという曖昧な状況で、

新技術を導入することは避けなければなりません。

 

情報通信技術(ICT)を生かした、IoTの現場導入が盛んに報道されています。

が、中小現場では焦らずに、まずは、導入するための

目的やメリットをハッキリさせることにじっくり時間を掛けます。

 

3.モノづくり現場のIoT

モノづくり現場でIoTを生かす視点は付加価値額の拡大です。

マスカスタマイゼーションと超短納期への対応の2つの視点は切り口になります。

 

自社工場へ適用したら具体的に何をどうしなければならないのか?と考えます。

足りないところを補完する目的でIoTを導入するのです。

 

例えば、超短納期に対応できる体制を整備することを考えます。

技術課題のひとつに「機械を止めない事」が上がったとします。

つまり予防保全の視点。

 

すると欲しくなるデータは2つです。

 

  • 機械が止まる原因を、漏れなく、全て把握する。
  • 機械が止まる原因を発生させる工学的な要因の時系列変化を把握する。

 

前者はまさにシチズンマシナリーの可視化システムで把握できます。

止まった実績を、まず漏れなく把握する。

 

ただし、このシステムのみでは目的を果たせません。

止まる原因を発生させる工学的な要因を追求し、その時系列変化を把握するシステムも必要です。

ここでは、センシング技術が主役です。

 

このように、IoTを生かすには、結局、自社が有している技術を知る尽くしていることが前提となります。

 

たとえば、自社の技術を知り尽くのには、作業標準票の作成が効果的です。

作業標準票はノウハウの塊であり、知らないと書けません。

 

IoTでは、現場のニーズ、現場は何をしりたがっているか?をまず把握します。

ニーズがなければ絶対に現場へ定着しないからです。

 

一方で、技術シーズを生かすことも考えるため、現場のニーズや目指したいこととシーズを突き合わせます。

ニーズとシーズを突き合わせ、照らし合わせて、生み出される新たな価値を考えます。

 

現場が知りたがっていることと技術シーズを突き合わせてIoTを考えませんか?

 

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出展:株式会社 工場経営研究所 伊藤哉技術士事務所


製造業専門の工場経営コンサルタント。金属工学の専門家で製造/生産技術、生産管理、IEにも詳しい。エンジニアの視点で課題を設定して結果を出し、工場で儲ける仕組みを定着させることを得意とする。コア技術の見極めに重点を置いている。 大手特殊鋼メーカーで20年近く、一貫して工場勤務。その間、エンジニア、管理者としての腕を磨く。売上高数十億円規模の新規事業の柱となる新技術、新製品開発を主導し成功させる。技術開発の集大成として多数の特許を取得した。 その後、家族の事情で転職し、6年間にわたり複数の中小ものづくり現場の管理者を実地で経験した。 大手企業と中小現場の違いを肌で理解しているのが強み、人財育成の重要性も強調する技術系コンサルタントである。 技術立国日本と地域のために、前向きで活力ある中小製造企業を増やしたいとの一念で、中小製造業専門の指導機関・株式会社工場経営研究所を設立。現在、同社代表取締役社長。1964年生まれ、名古屋大学大学院工学研究科前期課程修了。技術士(金属部門)