新規事業はもはや事業継続に必要な打ち手である!【北九州 新規事業イベン...

新規事業はもはや事業継続に必要な打ち手である!【北九州 新規事業イベントレポート】

公益財団法人北九州産業学術推進機構(以下、FAIS)は、北九州市における中小企業の新規事業への取り組みを促進するべく、新規事業セミナーを開催した。今回の新規事業セミナーは2019年10月3日に北九州市で新ビジネス創出支援補助金公募説明会を兼ねて行われ、市内中小企業を中心に約30名の方が参加した。

図1
当日の様子

このセミナーは北九州市におけるe-PORT2.0という取り組みの一環として行われており、その内容については以前以下の記事にて解説している。

【地方ICTの取組】北九州から新ビジネス創出 北九州e-PORT2.0

【地方ICTの取組】北九州e-PORT2.0 地域経済に貢献、新ビジネスの萌芽も

今回のセミナーは主催をFAISが努め、共催に日本政策金融公庫、後援に北九州市を迎えて開催された。内容としては以下の通り。

第一部: 「新規事業に取り組むときに直面する課題と解決策」
日本政策金融公庫 中小企業事業本部 西日本新事業・ベンチャー支援センター長 山本 大策 氏

第二部: 「当社が新事業に取り組む理由~環境変化と自立への挑戦~」
三島光産株式会社 執行役員 経営管理部長 石橋 眞剛 氏

第三部: 「北九州e-PORT2.0新ビジネス創出支援補助金 公募説明会」
(公財)北九州産業学術推進機構 情報産業振興センター 糸川 郁己 氏

まず日本政策金融公庫の山本氏が 「新規事業に取り組むときに直面する課題と解決策」について講演を行った。

セミナーの要点をまとめると以下の通り。

・事業継続のために新規事業に取り組む必要がある
・なぜなら、外部環境が激変する中で既存事業だけでは発展するのが難しくなっているから
・新規事業に取り組むには「不確実性を抑えること」がポイント
・不確実性を抑えるためには
 ①アンゾフの成長マトリックスのうち比較的不確実性の低い「新製品開発」や「新市場開拓」の領域から始めること
 ②リーン・スタートアップに習い、創る→作る→売るのサイクルを早く回すこと

多くの中小企業にとって「新規事業への取り組み」自体が経験の無い場合が多いながらも、漠然とその必要性を感じている経営者は多いのではないだろうか。激変する外部環境の中、新規事業は“成長”というよりも、もはや事業“継続”のために必要であるという観点は、それに取り組むモチベーションを上げてくれるメッセージである。更に、新規事業には不確実性がつきものだが、既存事業についても、外部環境が激変するため不確実な環境の中にいると捉えられなくもない。やはり危険なのは、今までの現状維持のままチャレンジをしない選択が最もリスクが高いことなのだと改めて感じた。

図2
※アンゾフの成長マトリックス

図3
※リーンスタートアップについて

次に三島光産株式会社の石橋氏が「当社が新事業に取り組む理由~環境変化と自立への挑戦~」と題して講演を行った。
三島光産株式会社は複数の企業を傘下に三島グループを形成し、北九州市を拠点に、『工場』で必要な人、設備、治具、部品、システム等、あらゆるものを提供する企業グループである。

三島光産は1915年に旭硝子の工場での製造ラインを請け負う「三島組」として創業し、様々な企業の工程請負を行って成長したが、その後自社製品の開発などの新規事業に積極的に投資し現在まで成長を続ける優良企業だ。成長を加速させる新しいチャレンジを行う事業を「戦略事業」位置づけ、既存事業とは区別して明確に投資を行っている。これらの投資による新規事業が結実し、市場シェア75%を誇る連続鋳造設備製造事業のほか、ICトレイ生産や磁気キャンセラー装置など高いシェアを誇る事業を複数展開している。

図4

これらの優良事業を産み出したのは、「時代の変化に早く気付き、進むべき方向を柔軟に考える」という経営姿勢だ。絶えず時代や外部環境は変化するという前提に立ち、既存事業だけに縛られずに積極的に成長を加速させる事業を見出し、投資する。このような意識を全社一丸で持って取り組んでいるというのが、講演者の言葉の端々からも伝わってきた。

中でも印象に残ったスライドは以下だ。非常にシンプルなことではあるが、実践できている企業がどれくらいあるだろうか。新しい事業に投資をするためには、既存事業や社内体制を盤石に仕上げられているということであり、それが「質素倹約」「社員とは運命共同体」という言葉に現れている。この基盤があるからこそ、新しい事業へのチャレンジができる。当然、新商品・新サービスの成功の背景には幾多の廃案や失敗があったに違いない。それを乗り越え、成長する新規事業を見極めて投資を集中できる目利き力も重要であると切に感じた。

図5

最後にFAISの糸川氏から北九州e-PORT構想2.0新ビジネス創出支援補助金についての説明が行われた。

e-PORT 2.0においては、e-PORTパートナーにおける130を超える企業や団体とのマッチングやオープンイノベーション促進によるコンソーシアム化と合わせ、新しいビジネスに挑戦する企業や団体に向けて資金支援を行っている。今回はその枠組の中において、「ICTを活用した新ビジネスの創出に向けた、ビジネスモデルの実証実験及び実証実験を通じた製品・サービスの事業化の取り組みを促進すること」を目的とした補助金による支援となる。

支援するフェーズとしては「実証支援」及び「事業化支援」であり、要素技術などの「研究開発」のフェーズは本補助制度の対象にはならないとのこと。対象事業者は企業・組合・コンソーシアムが対象となり、補助期間は交付決定後1年以内(年度跨ぎ可)となる。補助期間が年度を跨ぐ場合の活用も可能なのは魅力的だ。

本補助制度についての対象期間及び問い合わせ先は以下の通り。

<受付期間>
期間 令和元年10月1日(火)~11月15日(金)  
時間 10:00~12:00、13:00~17:00/月曜~金曜(祝日除く)

※申請に関する事前相談については、締切1週間前まで受け付け

<問合せ先>
情報産業振興センター 情報産業振興部 担当:糸川、南
〒808-0135  北九州市若松区ひびきの2番1号
TEL 093-695-3077 FAX 093-695-3667
Mail iipc@ksrp.or.jp

図6

FAISでは、今後も継続してe-PORT2.0に向けた取り組みを積極的に行っていくとのこと。今回のセミナーは地元の成功企業をモデルケースとして招聘し、実感の伴うストーリーを話されていたことが説得力になっていたと強く感じた。北九州市というものづくりの街において、FAISのような企業間・団体間ネットワークを介在する存在が果たす役割は大きいと感じた。


アペルザ ものづくりニュース/IoTナビ 西日本支部。西日本を中心にさまざまな現場を取材。最新のものづくり動向をお伝えします。