増える「サイレントチェンジ」 事故につながる“知らぬ間の仕様変更”

増える「サイレントチェンジ」 事故につながる“知らぬ間の仕様変更”

「契約整備」「品質検査」で防止
部品の調達先管理も重要

日本企業のグローバル展開にともなって海外生産と現地企業からの調達が増加する一方、複雑化したサプライチェーンによる弊害も出てきている。そのひとつが「サイレントチェンジ」。現地サプライヤーが勝手に仕様や調達先を変更し、それによって製品の品質が低下。故障や事故を引き起こし、ビジネスに悪影響を及ぼすケースが近年増加している。

事故の増加

サイレントチェンジとは、発注元の企業が知らないうちにサプライヤーによって部品の素材等の仕様が変更されて納品されてしまう事象のこと。サイレントチェンジが行われた部品を使った製品は、早期劣化や性能不足により故障の原因となり、実際にそれによる事故も発生している。

NITE(製品評価技術基盤機構)によると、サイレントチェンジが原因と推定できる火災事故は、これまでに800件超。ACアダプタからの発火120件、パソコン内部からの発火が681件あり、これ以外にも扇風機やこたつ、靴、事務用椅子などでサイレントチェンジが原因と疑われる事故が報告されている。

プラスチックやゴム、樹脂製品は配合によって性能やコストが大きく変動するため、無断で配合変更されやすい。過去5年で発覚したもののうち、プラスチックやゴム、樹脂製品が4分の1を占める。

近年、多発したのが絶縁樹脂に添加されている難燃剤が臭素から赤リンに置き換わったパターン。赤リンが水分や湿度で経年劣化し、端子間が短絡して異常発熱して発火にいたった事故が発生している。

発生原因と注意事項

サイレントチェンジが起きる原因はさまざま。利潤を確保したい、メーカーの厳しいコスト削減要求に対応したい、RoHSなど国際的な規制に対応したいなどの目的で、サプライヤーが仕様や調達先を変更する。また、メーカーが複雑化したサプライチェーンを管理できていない、部材変更によるリスクや影響範囲を理解せず適切な防止策を打てていない、現地の粗悪なサプライヤーを利用しているといった事情もある。

日本のサプライヤーの場合、性能を落とさずにコストを下げる、新技術を開発するといった対応が昔から行われてきたが、海外サプライヤーがそれと同じとは限らない。そうした意識の違いも一因だ。

ここで注意しなければならないのが、「サイレントチェンジは必ずしもサプライヤーの契約違反であるとは限らない」こと。調達品の仕様のうち、契約に含まれるものは一部でしかなく、契約に含まれない仕様の方が圧倒的に多い。また仕様や調達先の変更が契約に入っていないケースも多く、その場合、事故が起きてもサプライヤーに過失責任を問うことはできない。

例えば、「耐荷重100キログラム以上」と契約に明記していた場合、サプライヤーが耐荷重150キログラムを110キログラムに仕様変更しても契約違反ではない。それが5年後に耐荷重90キログラムまで劣化して事故が発生しても責任はメーカーが負うことになる。

サプライヤーの良心に依存しない

サイレントチェンジ対策は大きく2つ。ひとつは「契約の整備」。あらかじめ事故原因やトラブルにつながりそうな材料や部品の使用禁止を明記しておく。また、仕様を指定できない範囲に対しては、何か変更をする際には必ず事前承諾を得ることを明記する。これによりサプライヤーは許可なく変更ができなくなる。

もうひとつが「定期的な品質検査」。定期的に検査することで、異常を早期発見でき、サプライヤーへの心理的な抑止力になる。

NITE製品安全センターはサイレントチェンジへの対策に対し、サプライヤーの良心に依存しないことを大前提とし、グローバル調達では部品の調達先をどこまで管理できるかが重要であると指摘。さらに適切な契約と定期的な品質確認で防止することを訴えている。

参考:NITE(製品評価技術基盤機構)


1975年群馬県生まれ。明治大学院修了後、エレクトロニクス業界専門紙・電波新聞社入社。名古屋支局、北陸支局長を経て、2007年日本最大の製造業ポータルサイト「イプロス」で編集長を務める。2015年3月〜「オートメーション新聞」編集長(現職)。2016年5月〜「ものづくりニュース by aperza」編集長兼任。 趣味は釣りとダーツ