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中小製造業の未来を開く『実行する Mini-Industry 4.0』...

中小製造業の未来を開く『実行する Mini-Industry 4.0』新幹線(増築工場)と在来線(現在の工場)

日本の中小製造業を取り巻く環境が大きく変化している。

特に精密板金業界など製品の適用範囲が多岐に渡る業界では、輸出依存業種やIT業種からの受注が激減する一方で、内需関連業種は依然として活況を呈している。

2万社を誇る中小製造業・町工場で構成される業界内は二極化し、約25%の5000社だけに仕事が集中している。

 

なぜこのような顕著な二極化が起きているのか?

その原因の一つは、長期に渡り安定継続してきた親会社が少なくなったことである。

大半の企業は(町工場の一般的特徴であるが)親会社への依存体質が強く、営業活動が弱いので、親会社の影響を大きく受けてしまう。

 

30人規模の町工場でも数十社の一流企業との直接取引で、不況リスクを分散しているが、業種全体が冷え込むと仕事がなくなり、どんなに素晴らしい技術と生産設備を保有していても、他の業種への販路転換が難しく『不況抵抗力』は、弱いままである。

二つ目の理由は、今日までの設備投資の観点である。

積極的に設備投資を行った企業とそうでない企業に圧倒的な差が生じている。

 

精密板金製造業界を例にとれば、目覚ましい進化の歴史が認識できる。

数十年前には、1mm程度で許容された精度は、0.2mm以下の精度が一般的となり、現在では0.1mm以下の精度も要求されている。

また板厚や材質の進化も急速である。かつては、鉄板の厚さ3.2mm以下が常識であった板金加工は、今では20.0mmを超える厚さまで拡大した。

 

材質も鉄から非鉄に広がり、昔の機械では対応はできないので、最新機械を導入する必然性を(この進化が)如実に物語っている。

また、仕事に溢れる企業は、例外なくデジタル化と自動化の対応に積極的である。

精密板金加工業界は、段取り作業が圧倒的に多く、多品種少量生産が常態化しているので、デジタル化に遅れた企業は生産コストが低減できず、現在の市場要求コストに対応できない結果となってしまった。

 

仕事に満ち溢れ、勝ち組となった中小製造業・町工場でも、将来への不安は尽きない。

先述の通り、親会社がこけたら簡単に立ち直れない体質であることが、不安を払拭できない大きな要因である。

機械の進歩も、以前のように大きなイノベーションがなくなってきた。最新設備導入で競争力が生まれる環境も相当狭まっている。

 

今までと同じ設備投資に基づく経営戦略の繰り返しでは、勝ち組といえども将来に渡り継続的に発展することが難しい環境にあることは明白である。

このような環境の中で、中小製造業・町工場の次の一手は、『インダストリー4.0(以下I4.0)』を推進することであるのを疑う余地はない。

しかし、中小製造業・町工場が独自の力で『I4.0』を推進するのは容易ではない。

 

日本の中小製造業・町工場の経営者が『I4.0』を論理的に学ぶ必要はないが、I4.0による自社のメリットについての検討は(生き残り策として)必須である。

今回は(誤解を恐れず)早期実現可能な「中小製造業向 I4.0」を『実行するMini-Industry 4.0』と名付け、経営目標とその概要を紹介したい。

今日までの各企業の経営努力は“QCD(品質・コスト・納期)”の追求であった。『他社より優れたQCD』が勝ち組の条件といっても過言ではない。しかし、次の一手はQCDの追求にとどまらない。

 

『実行するMini-Industry 4.0』の壮大な経営目標は、『売上拡大』と『技術伝承』の追求である。

インターネット/クラウド技術を徹底的に使い、(世界に扉を開いて)顧客と外注を拡大し、「人工知能技術」を活用した熟練工の技術伝承とシミュレーションにより、少子高齢化に対応する。

『つながる工場』『考える工場』と表現されるスマート工場を、中小製造業の経営視点で(アナログとデジタルを融合し)実現するのが、『実行するMini-Industry 4.0』ある。

 

『実行するMini-Industry 4.0』の実現で、自社工場は究極のエンジニアリング工場に豹変する。賃加工体質から脱皮し、世界に通用するハブ工場の実現である。

3次元を活用したエンジニアリング提案は、受注のヒット率と受注リードタイムを大幅に短縮することが検証されているが、インターネット/クラウドを活用した水平的な『つながる工場』で新規顧客や新規外注が開拓されるのは夢物語ではない。

また、『つながる工場』は、垂直的に(デジタルで)エンジニアリング室と現場がつながることで飛躍的なイノベーションが生じる。

3次元や映像が作業の効果的な支援情報となることは、既に検証されている。ペーパーに依存している“作業指示書”や“図面”がデジタル情報に変わり、作業現場の現状を映像やセンサー情報などのビッグデータとマージしてサーバに格納されれば、『ドラえもん』のようにいつでも、過去—現在—未来を行き来する『つながる工場』も実現する。

 

『実行するMini-Industry 4.0』は、現状の工場を基本ベースにした『増築工場』である。増築部分は完全なサイバー・ワールドである。

別の例えでイメージすると、『実行するMini-Industry 4.0』は、国際標準規格の『新幹線』である。

現在の工場は、独自基準の『在来線』である。新幹線が開通しても、在来線は壊すのは得策ではない。在来線は今日までの歴史が育んだ財産である。

 

50年前に東京駅から始発した新幹線は、完璧な在来線との(乗降客の)乗り継ぎを実現した。

『実行するMini-Industry 4.0』での東京駅としての役割は、現在の工場(在来線)に存在するあらゆるドキュメントとデータを一元管理し、インテグレーションし、増築工場(新幹線)との乗り継ぎをすることである。

『実行するMini-Industry 4.0』実現アクションの第一段階は、東京駅構築である。すなわち、情報の一元管理とインテグレーションにより、情報の壮大な乗り継ぎ駅を構築することである。

 

新幹線と在来線のレール幅などの基準を揃えることを考えていたら、『実行するMini-Industry 4.0』は実現しない。


株式会社アルファTKG社長。1953年長野市生まれ。2014年3月までアマダ専務取締役。電気通信大学時代からアジアを中心に海外を訪問して見聞を広め、77年にアマダ入社後も海外販売本部長や欧米の海外子会社の社長を務めながら、グローバルな観点から日本および世界の製造業を見てきた。 http://a-tkg.com/